両親との同居

2019年4月末、妻は療養型病院に転院。ここで3カ月ほど入院する間に、自宅介護の準備をする。

まず庄司さんは、引っ越しを考えた。今のままエレベーターのない社宅の5階では、到底介護できそうにないからだ。さらに、平日の昼間は庄司さんも子どもたちも家にいないため、妻を一人にさせてしまうことも課題だった。

そんなとき、関西に住む母親から電話があった。「マンションを引き払って、お父さんとそっちに行こうと思うけど、どう?」と言う。庄司さんが妻を自宅介護しようとしていることを知っての提案だった。

「妻の介護を母にやってもらうつもりはありませんでしたが、昼間、母が家にいてくれたら、妻が1人になることなく自宅介護できます。渡りに船でした」

2018年に脳梗塞になった父親は、その後リハビリにより、自宅で生活できるまでに回復。だが最近は認知症が進行し、直近の出来事を忘れてしまうよう。まだ自分のことは自分ででき、徘徊はいかいなどはないものの、醤油を飲むことや、転倒することもあり目を離せない。庄司さんと同居するということは、長年払い続けたローンがやっと終わったマンションを手放し、住み慣れた土地を離れることになるが、母親はそれを厭わないほど、一人で介護をするのが不安になってきていたのだ。

庄司さんの子どもたちは、もちろん大賛成。しかし弟に連絡をすると、「母さん1人で2人の面倒を見るのは大変すぎる」と大反対。

どうやら弟は、庄司さんが妻の介護まで母親に丸投げするために、両親を呼び寄せると思っているようだった。庄司さんは、「母さんには平日の昼間、妻に何かあった時に連絡してもらったり、ヘルパーさんが来た時にちょっと応対してもらったりするだけだ」と何度も説明。だが弟は、「そうは言っても、結局母さんがやることになる」「どうしても同居するなら、父を施設に入れろ」と言うが、父親が承知するわけがない。

母親自身に決定を委ねると、あっさり同居が決まった。