便秘が引き起こすのは、腹痛や肌荒れだけではない

次に、便秘が病気を引き起こす可能性についてです。大前提として、便は体内には不要な老廃物ですから身体からなるべく早くに排泄すべきものです。腸に便が溜まった状態が続くと、腐敗し有害物質が発生、悪玉菌が増え腸内細菌のバランスを崩します。こうした影響は腹痛や肌荒れなどさまざまな不調として現れ、以下に挙げるような病気を引き起こすリスクもあります。

1.虚血性腸炎

虚血性腸炎は大腸での血流循環に障害をきたし潰瘍や炎症が生じる病気です。症状は左下腹部に痛みが生じ血便を伴うことが多いです。原因の一つとして腸管の内圧上昇が挙げられます。便秘の場合、溜まった便が腸管壁を圧迫し血流を滞らせてしまうため循環障害を起こしやすくなると考えられます。

2.腸閉塞

腸閉塞は文字通り腸管が塞がってしまう病気です。消化途中の食べ物や胃液などが排泄されずに腸内にとどまり、お腹の張りや腹痛、嘔吐おうとなどの症状を引き起こします。腸内に溜まった便が腸管を塞いでしまうことが原因になるケースがあります。

腹痛に苦しむ女性
写真=iStock.com/Kiwis
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慢性腎臓病、大腸がんのサインの場合もある

続いて、便秘に疾患が隠れている可能性についても触れておきます。最近の研究では、便秘症状の有無と慢性腎臓病の発症率とに関連があることがわかってきています。慢性腎臓病(CKD)は腎臓の働きが低下し、進行すると透析が必要となってしまう疾患です。便秘により不要なミネラルの排泄が滞ることや、体内で尿毒素が増えることによる腎機能の低下が慢性腎臓病発症の一因となる可能性が示唆されています。

また、便秘が大腸がんのサインであることも考えられます。大腸がんは日本におけるがん罹患りかん数で1位(男性3位、女性2位)のとても身近ながんです(「全国がん罹患データ(2016年~2018年)」がん情報サービス 2018年)。がんが腸管を圧迫し便の通り道が狭くなるため便秘症状が現れます。便が細くなる、血便が出るといった症状が出ることも多いです。

ここに挙げた慢性腎臓病、大腸がんのどちらも、自覚症状がほとんどなく、症状が出る頃には進行してしまっている可能性が高いものです。排便の変化など気になる症状がある場合には早めに受診していただきたいです。

上記に挙げた他にも、溜まった便が神経を圧迫し腰痛など体の痛みを引き起こしたり、硬くなった便が痔の原因になったりすることもあります。便秘は病気の一つとして捉えていただき、放置しないことが大切です。