ドイツでも暴走族vs犯罪組織の抗争が勃発
治安の乱れという現象は、やはり移民の多いドイツでも起こっている。去る5月4日、ノルトライン=ヴェストファーレン州のデュースブルクという町で、オートバイを乗り回すヘルズ・エンジェルズ(地獄の天使)という暴走族(元は米国の非合法組織)と、トルコ=アラブ系犯罪組織がぶつかり合い、100人以上の戦いとなった。その時、少なくとも19発の銃弾が発射され、4人が負傷、15人が拘束された。それも深夜の話ではなく、夜の8時半、まだ普通の市民が出歩いている時間の出来事だ。
ヘルズ・エンジェルズのほうは違法行為や暴力に染まった愚連隊という感じだが、後者は趣が違う。こちらはたいていイタリアのマフィアのように血縁でまとまっており、ドイツの文化からは完全に浮いている。このデュースブルクもそうだが、ベルリンやハンブルクその他の大都市では、彼らが根城にしている地域には、警察も足を踏み入れたがらない“no go area”ができてしまった。
ロシア、ウクライナ、ルーマニア、ポーランド、アルバニア、コソボなど移民の出身別にさまざまなグループがあり(デュースブルク市だけでも140グループと言われる)、麻薬、売春、密輸、窃盗団、物乞い集団など、多岐にわたる犯罪に手を染めている。しかも、何十年もの間に彼らなりのビジネスノウハウが確立しており、今さら下手に起訴しても検察が負ける可能性もあるという。要するに移民ギャングたちはプロなのだ。はっきり言って、一番気の毒なのは、普通の、真面目に働いている移民の人たちだ。
移民問題に揺れる中、新たにウクライナ難民が…
ただ、一部の移民がどれほど暴走しても、ドイツでは過去の歴史のトラウマのせいもあり、これまで政治家が外国人にはっきりとモノを言うことがなかった。しかも、「多文化共生」などとお茶を濁してきたため、犯罪が増え、一部地域では治安が大いに乱れた。
そこに敢然とメスを入れようとしたのが、ノルトライン=ヴェストファーレン州の内務大臣だ。2019年1月より彼の勇気ある英断で大々的な犯罪取り締まりが始まり、今に至っている。それでも残念ながら時々、前述のような抗争が起こるが、今回の事件の後、同州では早速、15人からなる殺人捜査チームが組まれたという。
さて、長年の移民歓迎、およびマルチ・カルチャー・ブームが終焉を告げようとしているように見えたヨーロッパだったが、今、新たに、ウクライナからEUへと、続々と難民が到着している。ウクライナ人は3カ月ならビザなしでEUに入国できるので、多くの人が隣国のポーランドに逃げ込んだ。