「あなたと同じ気持ち」子どもの気持ちに寄り添う
親は、こうした子どもの変化を見逃さないようにしてください。一応の目安として「9歳の壁」を挙げましたが、精神的な年齢は必ずしも実年齢と同じではありません。子どもの様子をよく見て、怖がってそわそわしたり、ニュースを見るのをいやがったりしたら、なるべく戦争のニュースは見せないようにしましょう。
そのうえで、親は子どもの気持ちに寄り添ってください。「怖くないよ」と否定するのではなく、怖さを感じること、不安を持つのは当たり前のことだと、その気持ちを認め、「お父さん/お母さんもこわいな」「あなたと同じ気持ちだよ」と伝えます。子どもは自分と同じように感じている人がいることに安心します。
そして、こういうときこそスキンシップです。ギュッと抱きしめたり、手を握ったりしてあげると、大きな安心感につながります。
スキンシップがとりにくい年齢なら、「ボイスシップ」が有効です。ボイスシップとは、安心感を与える声がけのこと。「みんなここにいるから大丈夫だよ」「お母さんが守るからね」など、家が安心、安全な場所だということを言葉で伝えます。
また夜が怖いという子どもについては、普段は1人で寝ているとしても、しばらく一緒の部屋で寝てあげるのもよいでしょう。
東日本大震災のように大きな災害が起こったときにも、こうした災害の様子をテレビなどで何度も目にすることで、大きな恐怖心や不安感を持つようになり不安定になった子どもたちがたくさんいました。対処方法は同じなので、ぜひ覚えておいてほしいと思います。
極端に制限する必要はない
子どもが恐怖心や不安感で耐えきれなくなっている様子を、見逃さないことは大切ですが、そうでなければ、あまり神経質になる必要はありません。戦争が起こっていることは事実ですし、こうしたネガティブな情報は、生活の中にどんどん入ってくるので、全くゼロにすることはできません。もともと人間は、子どもも含め、危険や不安に対処する力を持っています。ですから基本的には、極端に親がそれを制限する必要はありません。
ただ、だからといって子どもの不安をあおる必要はないと思います。まだまだ死に関して理解ができない年齢の子どもに対して、ウクライナで起きていることすべてを、リアルタイムで学ばせなければいけないというものではありません。例えば私たちの多くが、第2次世界大戦は、リアルタイムではなく歴史として学んできています。子どもの成長や発達に合わせて伝えていくという発想を持っていればよいのです。子どもが理解でき、受け取るとこができるキャパシティに合わせて、親が伝える情報を選択すべきでしょう。