本当に感動したなら、自分が注目した出来事や言葉、そのとき感じた自分の思いなどを具体的に書くのは、簡単なはずです。具体化すれば説得力が出る――。考えてみれば、当たり前の話ですね。

会話をメモで残しておくといい

逆に言えば、「抽象的に書くと伝わらない」ということです。

「世界の見方が変わる本」とか「ちょっと贅沢で特別な雰囲気のある店」とか、こんな標語みたいな抽象的な言葉には、人を説得する力がまるでありません。

「平日イオンモールにいる主婦がついレジに持っていってしまうような本」「20代のサラリーマンが彼女の誕生祝いに使うような店」のほうが、はるかにいい。「平和を守れ」のような、抽象概念だけの言葉がいちばんダメです。

具体的に書くのは、難しいことではありません。うまく整理しようとせず、「見たまま」「聞いたまま」「感じたまま」を自然に、正確に書けばいいのです。

お礼は「何がどう嬉しかったのか」、企画の提案は「どこがどのようにおもしろいと思ったのか」を書く。「君を愛してる」より「君の声が聞きたい」のほうがいいですね。

「抽象的でダメな書き方」と「具体的でよい書き方」をまとめると

×一般的な名前(パン)→○固有名・限定的な名前(バゲット・明太子フランス)
×大まかな日時(先日)→○正確な日時(3日前)
×類型化した描写(上品なネコ)→○見たまま感じたままの描写(柔らかそうな毛並みのネコ)
×発言の要旨(夢の大切さ)→○発言の正確な引用(「自分の夢を紙に書け」)

「正確に書く」というのは単純ですが、慣れが要ります。日ごろから、読んだ本・会った人・食べたものなどを「抽象的な言葉を使わずに、どう描写するか」と考えて、話したりメモを残したりしておくのが訓練になります。

笑顔でメモを取る女性
写真=iStock.com/yamasan
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「頭がいい」と思わせる、わかりやすい自己PR文

わかりやすい文章は、就職・転職などの自己PRにも役立ちます。

企業の採用担当者は、仰々しい志望動機やゴテゴテと飾った自己PR文を読み飽きて、ウンザリしています。そんなとき、もし大量の応募書類の中に、とても読みやすく、スキッと筋の通った自己PR文を見つけたら、どうでしょうか。この応募者は頭がいいぞと思い、名前を覚える。たぶん書類審査をパスできるでしょう。

まずは、テクニックを身につけていない人の自己PR文から。

2年4カ月の間、社会人として働いた結果、仕事の厳しさと楽しさを知ることができました。接客・販売職もとてもやりがいの多い仕事でしたが、今は、現場をバックアップするサービス業の後方部門の仕事が私の適職だと考えています。

接客・販売職で経験を積んだからこそ、次に歩むべき道を見つけることができたと思います。「明るさ」と「積極性」をいつも意識して、新しい仕事で必要な知識やスキルは、自己研鑽とともに現場で働きながら学ぶよう努め、短期間で戦力として役に立てるようになりたいと考えています。