長ったらしいスーツの文章が無様なのは、動機が間違っているからです。

「読者の疑問に答えよう」というサービス心ではなく、「自分が批判されたくない」という保身のために書いている。そんな心根は読み手にすぐ見透かされます。

ビジネスに限らず、大人の文章は、こういった「予防線」のオンパレードです。次のような言い回しを書類で見たことはないでしょうか。

「まだ精査が必要ですが、○○という傾向が見受けられます」
「△△との見方もあるものの、全体としては□□という説がまだ根強いと言えます」
「○○であるかもしれません。ただ少なくとも△△であるとは言えそうです」

会話で婉曲的にものを言うのは、社会人としての暗黙のルールかもしれません。この種の「いかにもオトナ的」な言い方を好む人が多いのも事実でしょう。

しかし、「誰からも読まれる文章」「影響力のある文章」を書きたければ、予防線はダメです。必然性のない婉曲は、わかりにくい。スッキリしない。食い足りなさやモヤモヤが残る。読み手に負担をかけてしまう。

むしろ、予防線をまったく張らないことを、強くおすすめします。

反論や異論だけでなく、的外れなツッコミがくるかもしれないとしても、あえて受け入れましょう。そんなことより、文章の明朗さのほうが大切です。

パソコンを使用する男性
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お礼メールを読めば一発で分かる…仕事のできる人の共通点

ビジネスで書く文章は、その目的の多くが「説得」です。相手に理解してもらうための「説得力」を生むためには、何が必要でしょうか。

基本は、根拠となる統計や調査データを示すことです。最近では、作り手のストーリーが買い手の心を動かすのだ、なんてこともよく言われています。商品開発の苦労話や「私がこのレタスを作りました」という写真をサイトで紹介しましょう、と。

ただ、こういった「説得力」の工夫は、ちょっと高度ですね。誰にもすぐにできるものではありません。

ポイントは「とにかく具体的に書く」ことです。

たとえば、取材させてもらった人へのお礼メールは、普通こんなふうに書きます。「今日は貴重なお話をありがとうございました。中でもアメリカ留学でのエピソードが印象に残っています。私も何か新しいことにチャレンジしたいと思いました」

しかし、説得力を持たせたいならば、「アメリカ留学中に訪れたアラスカのエピソードで『体験しないと知識はつかない』とおっしゃっていたことが、印象に残っています。私も昔から関心を持っている幼児教育を学ぶため、まず地域のボランティアからはじめてみようと思いました」と、いちいち具体的に書く。