なぜか話が弾む「丸いテーブル」でいろいろ話す

スポーツチームが合宿や遠征などで共同生活をすると、食事は大広間に集まってビュッフェ形式でみんな一緒に、ということになります。基本的には大人数でワイワイと食べることになります。

エディー・ジョーンズさんの日本代表では、甘いものが禁止されていました。それなのに、ビュッフェにはスイーツが置いてあるのです。当時のチームメイトだった立川理道選手は、「まるでトラップのようで、そこに手を出したら次の朝からこっぴどい練習が始まるんですよね」と笑っていましたが、食事は合宿や遠征では楽しみの一つでした。

楽しい時間ですから、会話が弾みます。コミュニケーションを深める機会としても、チームに欠かせないものでした。

テーブルは円卓を推奨していた気がします。丸いテーブルというのが、実は大切なポイントだったと思います。

四角いテーブルは、2人掛けや4人掛けが基本的なサイズです。6人とか8人がまとまって座ると、どうしても縦長になります。同じテーブルを囲んでも、右端と左端では距離が遠い。全員がいつも共通の話題で盛り上がるのは難しく、2つとか3つに分かれて話をしていく、という感じになるのではないでしょうか。

それが悪い、と言うつもりはありません。ただ、せっかく同じテーブルに着いたのです。結果的に2人ずつ、3人ずつで話をすることになっても、ひとつのテーマで盛り上がることのできる環境があったらいいでしょう。

円卓なら、ひとつのテーブルに6人とか8人が座ることができます。それも、身体の向きを変えずに、全員の顔を見渡すことができる。

ホテルの宴会場にあるセットされた円卓
写真=iStock.com/802290022
※写真はイメージです

食事をして、話をして、食後にコーヒーや紅茶を飲んで、また話をして。みんなが同じ話題について語り合って、ときには熱く議論をして、もちろんしょうもない話もたくさんして、東芝でも日本代表でも食事の時間を有意義に過ごすことができました。

円卓がいいなと思うもうひとつの理由は、色々な選手と話ができることです。6人掛けでも8人掛けでも、いつも同じ顔触れになるわけではない。普段はあまり話す機会のない年下の選手に、「一緒に食べようよ」と気軽に声をかけることもできる。食事のたびに顔触れが変わって、そのぶんだけたくさんの選手と話ができます。試合前日に選手だけで実施するプレイヤーズミーティングでも、いすを動かして選手の顔が見える状況を作っていました。

コロナ禍では「黙食」が推奨されています。食事をしながら会話を楽しむことについては、まだもう少し慎重にならざるを得ないのでしょう。このウイルスとうまく付き合えるようになったら、スポーツチームの食堂にもかつての賑わいが戻ってくることを願っています。

円卓と言えばホテルでの会食や中華料理が連想されますが、たとえばキャンプに行ったとき、バーベキューをするとき、何となくそう座っているのではないかと思います。みんなの顔が見えて、話しやすいし、話も聞きやすいですよね。日常から取り入れられると良いのではないでしょうか。

【関連記事】
野村克也監督の座右の銘「人間が最低限、持っていなければならない3つの要素」の深すぎる含蓄
「グラウンドに挨拶はしなくていい」日本一の少年野球チームが廃止した"野球界の謎慣習"
"50代サラリーマン無理ゲー社会"で「困ったおじさん」になる人とならない人の決定的違い
「恩返しできず本当に申し訳ない」絶対に泣かない野村監督が思わず涙を流した"ある瞬間"
ダメな上司ほど最初に使ってしまう…「部下との1対1」で避けたほうがいい"ある言葉"