「お送りさせていただきます」「送らせていただきます」は誤りです。「いただきます」は、相手の許可が必要な行為の場合に用いる表現だからです。政治家先生方が国会答弁で「検討させていただきます」「お答えさせていただきます」などと乱発しているため、国民にも広がってしまいました。

「送らせてもらった資料ですが……」は誤り(無礼)です。「送りますね」も、よほど親密な相手でないと、無礼とされるでしょう。

「お送りしますね」は、なれなれしすぎるでしょう。「ね」は、フォーマルな文書では用いない、友達同士の言葉です。

人称代名詞の難しさ

第1人称代名詞と第2人称代名詞は、英語では“I”と“you”であり、場合によってさまざまな呼称を使い分ける必要はありません(ドイツ語ではduとSieの違い、フランス語ではtuとvousの違いがありますが)。

ところが、日本語の場合、「私」「あなた」について、場合によってさまざまな言い方があります。そして適切な表現を使わなければなりません。相手との関係に応じた微妙な使い分けが必要なのです。これを面倒と感じるかもしれませんが、軽んじてはいけません。

正式な仕事の文書で「僕」という言葉を使う人が時々いますが、どうかと思います。

また、自分の配偶者を指すのに、「僕の奥さん」と言う人がいます。ふざけて言っているのではないようです。こうした表現に出くわすと、その人の言語感覚だけでなく、精神構造を疑います。

避けたほうがよい表現

判断が難しいものとして、上司に向かって言う「ご苦労様でした」があります。これは、間違いだと感じる人が多いでしょう。「ご苦労様」というのは、目下の人に対して使う言葉だからです。

では、正しい表現は何でしょうか? 「お疲れ様でした」だとされるのですが、これにも違和感を持つ人がいるでしょう。

「了解です」「なるほどですね」などは、いわゆる「バイト敬語」の一種とも言えます。「了解です」よりは、「承知しました」がよいでしょう。

日曜日の連絡で「お休みのところ、失礼します」という気遣いをされることがあるのですが、気遣いになっているかどうか、疑問です。私は、日曜でも原稿の締め切りでパニック状態になっている場合が多いので、「お休みできるほど優雅な生活ではありません」とひねくれた気持ちになります。