敬語の使い方がまるでデタラメ

某大学のA教授の研究室に電話をすると、秘書が出て、「A先生はいま会議中で研究室にはいらっしゃいません」という返事が返ってきます。

秘書がA先生を敬って、研究室で尊敬語を使うのはよいのですが、第三者との連絡にも同じような表現では困ります。

あるいは、「上司の判断を仰ぎます」と言う人もいます。自社の「上司」に敬意を払っています。

私もその上司を仰がなくてはならないことになり、きわめて不快な気持ちになります。まさに「子供の使い」です。こちらは特命全権大使と交渉していたつもりなのに……。

そうかと思うと、会社名に「さん」をつけます。「プレジデント社さん」というように。こうした呼び方が始まったのは、1980年代の頃ではなかったかと思います。私はその当時感じた違和感をいまだに持っていますが、いつの間にか定着してしまったようです。

20年間の大きな変化

2002年に『「超」文章法』を書いたとき、敬語については何も触れませんでした。あまり問題意識を持っていなかったのです。ところがいまでは、毎日のように気になります。当時に比べて、敬語の使い方が乱れてきているのです。

なぜこのようなことになってしまったのでしょうか?

敬語の使い方を誤ると、知的能力を疑われるだけではありません。相手に不快感を与え、無礼だと感じさせます。ときには、致命的なことになります。

逆に、適切な敬語を使ったメールを受け取ると、知的水準の高い人だと感じます。敬語を正しく使えれば、印象に残ります。

能力を示す機会はいろいろあるのですが、敬語を正しく使うのは、その中でも強力な手段の1つです。