著名人に「私も3回目を打ちました」と語らせる目的とは

この動画がメインターゲットにしているのは3回目接種を躊躇している人であり、1回も打っていない人はほぼ対象にしていない。この点については、内閣府も賢明な判断をしたといえよう。これまでワクチンを打ってこなかった少数派は、これからも打ちたいとはまず考えない。今後、薬害などが発生したとしても「だから言っただろ?」で終わりだ。

仮に重篤な後遺症が認められたとしても、国は因果関係を認めないだろう。だが、これまでの経緯を冷静に振り返ってみると「ワクチンは感染予防になる」という設定も嘘だったし、「2回目接種を70%の国民が打てば、感染拡大は収まる」という設定も嘘だった。「子どもや若者にも接種が必要」という説も、彼らが重症化しない時点で粉砕されているし、2回、3回と打った人でも第6波で次々と陽性者になっている現状を鑑みれば、感染防止効果の点においても疑問符がつく。

ワクチン接種を受ける女性
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

それでも政府は「私も打ちました」と著名人に語らせて、情弱に3回目接種を激推ししている。「私も打ちました」というチラシを制作し、ダウンロードすれば自分の写真をチラシに貼り付けることができる、といった取り組みもした。効果はさておき、3回、4回……とワクチンを打たせることが政府の目的になっているのだ。

日本人の行動規範の裏側にあるもの

ここまでの話を踏まえつつ、以降は冒頭で示した「他人に迷惑をかけない」「他人のために自分は我慢をすべき」という行動規範の裏側に潜んでいる心理を、私なりに読み解いていこうと思う。キーワードは「差別」だ。

少しだけ昔話にお付き合いいただきたい。「昔」といっても、10年ほど前のネット文脈に関する話題である。

2000年代の中盤から2015年あたりまで、ネットでは「在日特権」という言葉が頻繁に用いられていた。これは「在日コリアンは不当に利益を享受しており、フェアではない」という考えがベースになっている言葉で、彼らへの差別がネットで横行するようになった。

確かに、三重県伊賀市において在日コリアンに対する住民税半減といった優遇施策がおこなわれるなど、実例もないわけではない。ただ、ネットで取り沙汰された事柄は荒唐無稽なものも多かった。たとえば「水道代がタダ」「司法試験の一次試験免除」「プロスポーツにおける在日枠の存在」「在日コリアンはパチンコ屋で儲けても税金を支払う必要はない」「マスメディアの採用には在日枠があり、就活で有利」などが挙げられる。

さらにこれが高じて「在日は日本社会を裏で牛耳っており、日本の進む道を決めている」「そうして、韓国に有利なように政治や経済をコントロールしようとしている」といった言説まで登場。また、犯罪者に関する情報がメディアに出ると「日本名だが、こいつは在日」と決めつける、謎の“国籍透視能力”を発揮する人物がネットに出現するのもお約束だった。大規模災害が発生した際には「現地で韓国人の強盗団が暗躍している」といった説もまことしやかに流布された。