飲食店の客から浮かび上がってくるマスク事情

飲食店内の現状を観察してみると、ごくまれに「マスク会食(尾身食い)」を励行しているグループを見かけることはあるが、大半のグループは全員がマスクなどせず、大声で喋っている。気をつかっていたとしても、せいぜい顎マスクだ。

しかし、そんな彼らも入店時や便所へ行くとき、退店時にはマスクを装着する。その行為に合理性はないと知りながら、「社会の目」がつくり出したコンセンサスに黙って従ってしまう。それとも、自分たちのいるテーブルにはウイルスを封じ込める結界が張られているとでも思っているのか? はたまた、少しでもテーブルから離れるのであれば無条件に他グループへの配慮が必要だと考えているのか? そこまで周囲への気遣いを意識するのであれば、店員がオーダーを取りに来たときや、料理を運んできたときもマスクを着けるべきだろう。

マスク会食をしているグループにしても、恐らくそのなかでもっとも発言力のある人物、地位の高い人物がマスクを着けているから、それに合わせているだけなのだと思われる。あるいは、職業が公務員であるため、役所に通報が入ることを恐れて外せないのかもしれない。いずれにせよ“忖度マスク”にはなんの合理性もない。

3回目のワクチン接種はバーゲンセールの様相

最後は(3)「新型コロナウイルスのワクチンを接種しない人」について。ワクチンの2回接種率も80%を超え、現在は3回目を猛烈バーゲンセール中だ。まさに「いいから打て! とにかく打て!」の大合唱である。

内閣府政府広報オンラインのツイッターアカウントは今年4月1日、青山学院大学陸上部監督の原晋氏が登場する、ワクチン3回目接種推奨動画を公開した。現在、同映像はテレビでも放送されている。動画では、箱根駅伝の折にマスク未着用で指導にあたっていた原氏が、神妙な面持ちでマスクを着け、注射を打ってもらっている。原氏のメッセージは以下のとおり。

〈3回目のワクチン接種を迷われている方もいるでしょう。不安がある方もいるでしょう。しかし、自分のため、仲間のためにも、一歩ずつ進まなくては。私も、3回目を打ちました。3回目接種で、安心というタスキを未来へつなぐために〉

実にワケがわからないCMだ。「迷われている方」「不安がある方」に対して、暗に「私(原氏)も3回目を打ったけど問題なかった。つべこべ言わずにさっさと3発目を打て!」と言っているのである。CMとは、どんなに表現がマイルドであろうが、基本的に「買え!」「やれ!」「参加しろ!」と行動を促すことを目的にしている。「買うか、買わないかの判断材料にしてください」なんてCMはあり得ない。原氏は制作サイドのオーダーに従い、求められた役割に徹しているだけであることは重々承知しているが、「私が3回目を打ち、なにも問題が起きなかったことが安全の証拠です。これを判断材料にして、ぜひ3回目接種を受けてください」というメッセージを発する姿は、とても奇妙である。