若年層の全国大会に向けて無理な練習をさせる指導者

中学の場合、私立で駅伝を強化している学校はほとんどない。稀に近隣の強い中学に越境入学する選手もいるが、ほとんどの選手は住んでいる地域の学校に通うことになる。そのメンバーで都道府県予選を勝ち抜き、全国大会で好成績を残すには、ハイレベルの練習を選手たちに課すしかないのだ。

「中学駅伝はかなりネックだと思いますよ。その時期に無理をさせちゃうと、適切なトレーニングにならないですし、走るのを嫌いになっちゃう。チームで1~2番の子はまだいいんです。3~6番手ぐらいの子がレベル以上の練習をガンガンやることになる。その影響が高校や大学で出てくるんです」(前出コーチ)

ランナーシルエット
写真=iStock.com/YanLev
※写真はイメージです

スポーツは各年代によって強化すべきポイントが異なる。6~11歳は神経系、12~14歳は呼吸・循環系と持久力、15~18歳は筋力や瞬発力の向上が顕著な時期だ。本来なら将来を見据えて、それぞれのステージでやるべきトレーニングがあるはずだが、日本は一貫したスポーツ指導を受けるのが難しい。しかも、若年層の全国大会があることで、無理な練習をさせる指導者が出てくるのだ。

加えて、先生やコーチが怖いので、「怒られないためにやっている」という選手もいる。ある大学の監督は「名門校出身の選手ほど監督の顔色をうかがっているんです」と教えてくれた。かつて全中王者に輝いたあるアスリートは、「高校で伸び悩む原因として、中学時代の実績から重圧を感じている部分もあると思います」と話しており、メンタル面でも影響があるようだ。