恐れていることは、需要の上振れに対応できないこと

——コロナ禍の前の2019年5月に成田―ホノルル間に投入された超大型機「A380」はウィズ・コロナの厳しい状況下で抱えていますが、負担ではありませんか。

【芝田】先ほどお話ししたように国際線の中でもホノルル線の回復は早いと見ています。A380はホノルルに特化したものなのでそんなに遠くないうちに活躍する機材だと考えています。今も駐機中の機内でレストランとして利用したり、遊覧飛行で飛んだりしてしっかり使わせてもらっている。今は翼を温めているという感じで、心配はしていません。

ANAホールディングス 代表取締役社長 芝田浩二氏
撮影=遠藤素子

——芝田さんの見方はとても楽観的、楽天的に思います。いつもそうですか。

【芝田】その見方は正しいですよ(笑)。「楽に思う」ことを心掛けています。悪くなった時の下支えはしっかりやっていますが、需要が上振れた時にそれに対応できる余力がないとせっかくの勝機、チャンスを失ってしまう。その備えは常にしておきたいのです。

——3月に国際線の新ブランド「AirJapan」を2023年度後半にアジアなどに飛ばすと発表されました。それも需要が回復した時の備えですか。

【芝田】これでANAグループにはフルサービスのANA、LCC(格安航空会社)のPeach Aviation、それに加えてハイブリッドのAirJapanがそろいました。それぞれの強みを生かしながら成長に向けて力を発揮してもらう。今後の需要の回復のスピードはどうか? 中身は? インバウンドなのかアウトバウンドなのか? 訪日の戻りは速いのか? などと考えを巡らせています。訪日外国人の戻りが速ければ、訪日外国人をターゲットにしているAirJapanブランドが活躍できます。

ANA・3ブランドの飛行機の模型
撮影=遠藤素子

コロナ禍で温めてきた“新しい翼”

三つのブランド、サービスをそろえたことで、ニーズに応じてお客様が選択できるようになり、ANAグループの魅力度は増すと思います。ANA、Peach、AirJapanそれぞれのブランドで、お客様のライフスタイルに応じてサービスを選べる環境を整備したい。

——「強靭な体質」に加えて経営に柔軟性を付け加えたということですか。

【芝田】そう思います。ただそのためにはそれぞれのブランドが強靭さをもつ努力をそれぞれにしなければならない。例えばAirJapanはPeachのローコスト経営を学び、しっかり低コストを実現する。機内のサービスは座席回りも含めてフルサービスのANAのようにお客様に満足してもらえるように知恵を絞らなければいけない。そうした努力の結果で、お客様が三つのブランドを回遊できるような仕組みができれば収入増につながっていきます。