春先は自律神経の調整が追いつかず、心身のバランスを崩しやすい

この時期に陥りやすい不調の一因としては、自律神経の乱れも無視できません。自律神経は神経系のひとつです。神経系は動物の器官で、外界からの情報の伝達と処理を担っており、体内の各組織や器官が安定した状態を保てるように調節をする役目があります。神経系は多数の神経細胞から成り、それぞれ担当する機能が異なるのですが、その中でも自律神経は呼吸器や循環器、消化器など、意思とは無関係に働く器官の調節を担当しています。

自律神経は、体を緊張させる交感神経とリラックスさせる副交感神経に分かれます。24時間休むことなく働き続けていますが、交感神経は活動時や日中に、副交感神経は安静時や夜間に活発になりやすいです。私たちの身体は日々さまざまな外界の環境変化にさらされていますが、正反対の機能を持つ交感神経と副交感神経とが拮抗きっこう的に作用し合って心身のバランスを保っています。

春先は身体や睡眠を冬モードから季節の変化に順応させる移行期間です。そのため気候や日照時間など環境の変化に、自律神経による調節が追いつかず心身のバランスを崩しやすいというわけです。

たんぽぽ
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「起きられない」は副交感神経、「眠れない」は交感神経が優位

(1)著しい眠気により朝起きられない・日中眠くなるケース

朝起きられない・日中眠くなるなどの症状が出る場合は、副交感神経が優位な状態であることが考えられます。自律神経はさまざまな環境変化から心身のバランスを保つ役目を担うことはご説明したとおりです。

気温が高い場合には心拍や呼吸を落ちつかせて体温を低下させるために副交感神経が働きます。逆に気温が低い場合は熱を逃さぬよう血流を低下させるために交感神経が優位になります。気温が上がり日照時間が増える春は、本来ならば交感神経が働き活動的になるはずの日中などにも副交感神経が優位になりやすく、眠気が生じてしまうと考えられます。

(2)眠れないケース

夜寝つけない場合は、夜間に交感神経が優位な状態となっていることが考えられます。眠りにつくためには、交感神経優位の状態(興奮した状態)から副交感神経優位の状態(リラックスした状態)への切り替えが必要になります。私たちの身体は心身のストレスを感じると、交感神経が優位に働きます。

現代社会はストレスが多いと言われますが、春は季節の変わり目であることや、新年度を迎えることによる環境の変化等、この時期特有のストレスを感じる方が多い季節でもあります。過度なストレスにより自律神経に乱れが生じることで、副交感神経への切り替えがうまく行えなくなり、夜になっても交感神経優位の興奮状態が維持され、結果として寝付けない可能性が考えられます。