民主主義諸国のために働くことに日本の国益がある

日本は、自他ともに認める民主主義諸国の中のアジアの有力国である。その行動に他の民主主義諸国の期待が集まる。日本にとっても、民主主義諸国が駆逐されるよりも、勢いを高めるほうが、望ましい。日本は自由民主主義諸国との連携を外交安全保障の基盤にしており、経済においても相当程度にそう言える。

権威主義諸国が、国際法を破って、民主主義諸国を駆逐して圧倒していく状況を防ぐことに、日本の国益がある。現在の日本政府のロシア非難とウクライナ支援の姿勢は、妥当なものだと言える。

日本は武器提供などの支援はできない。そのことは一つの政策的な論点ではある。だがウクライナに関しては、NATO構成諸国が軍事支援をしているので、日本は特に心配しなくていい。防弾チョッキの提供も国際的に注目されるくらいの努力ではある。日本は、国際的な人道援助に対する支援もしている。周辺国における難民支援も含めて、人道援助のニーズは甚大だ。最大限かつ継続的に支援をしていくべきだ。

東アジアでの危機発生時にも必ず活きる

停戦や和平に向けた動きで、日本が直接的に支援できることは限られているかのようにも見える。確かに派手なことはできないだろう。だがウクライナをめぐって新しい国際安全保障の運営がなされなければならないことは、必至である。例えばボスニア・ヘルツェゴビナでの紛争の終結に伴って設立された上級代表事務所(OHR)に日本は継続的に関与している。それをモデルにした国際的な政治調整活動に、日本が側面支援をしていくべきであることに疑いの余地はない。

これらはウクライナのための利他的な行動ではあるが、日本自らを助けるものでもある。国際法秩序の維持が、東アジアにおける秩序の維持にも大切であることはすでに述べた。同盟国アメリカと、準同盟国と言ってもよいNATO構成諸国に、日本の安全保障維持への関心をアピールすることは、東アジアにおいて危機が発生した際には必ず活きる。潜在的敵対国に、自由民主主義諸国の安全保障面での結束を示すことには、計り知れない重要性がある。同盟国・友好国と連携した行動は、現場の要員の経験としても、貴重なものになるだろう。

日本は、長きにわたる同盟関係にもかかわらず、アメリカと共に戦ったことがない。そもそも日本はその歴史の中で、同盟関係を持って戦ったことがほとんどない(第1次世界大戦と第2次世界大戦中に同盟関係があったが、共同作戦をとったことまではない)。同じ原則・価値・目的のために、同盟国・友好国と協働する経験は、将来の日本にとっても、極めて大きな重要性を持つはずだ。