IR計画の「撤退」に言及し、動揺広がる
わかりやすく説明すると、土地課題、コロナなど想定外のことが生じた場合には計画の変更などの対応を認めるという意味だ。その中に「撤退」も含まれるのではないかという疑念が生じている。
3月16日に大阪市議会で参考人招致されたのは、大阪IR社の社長でもあるオリックスの高橋豊典氏とMGMのエドワード・バウワーズ氏。
山中智子市議(共産)は「問題が起こった時、事業の進捗が困難と表明することもあるのか」とIRからの撤退の可能性を質問した。
高橋氏は「1兆円の投資をしており、一つ一つ課題を解決していく。民間事業者として大切なことだ。(問題は)府市と相談していく。可能性というのは低いかなと思いますが、あるかなしやというご質問については、あるかもしれません」との見解を示した。
3月末をめどに大阪府議会と大阪市議会でIRの区域整備計画案が議決される見込みだ。可決となると、次のステップ、4月末に国に認定の申請に移行する。
「決議を目前に控え、高橋氏が撤退に言及したことで、府と市に大きな動揺が広がっている」(大阪府幹部)
それほどIR計画には課題が山積している裏返しといえる。IR計画の土地は大阪市が大阪IRに定期借地権として貸し出すが、その課題は協定書の中でも液状化などの「土地問題」と「コロナ」が理由としてあげられている。
そして協定書の第13条の2では、土地課題についてさらに細かく明記されている。
<本件土地に係る地中障害物の撤去、土壌汚染対策及び液状化対策を(大阪IR社が)自ら実施するものとし、大阪市は、当該土地課題対策の実施に実務上合理的な範囲内で最大限協力>とある。
つまり、液状化など土壌汚染が生じた場合、大阪IR社が解決すると規定されている。だが、大阪市は条文に反するような790億円の負担を実質的に決めている。
その根拠となったのは協定書にある<土地課題対策費に要する費用負担については2022年2月及び3月開催の市会による債務負担行為の議決が行われることを条件として、市が合理的に判断する範囲で当該費用を負担する>という記載によるものだ。