ホテルマンも勉強になる帝国ホテルのサービス

例えば、帝国ホテルのエントランスでのベルマンの一挙手一投足は実に参考になる。ホテルの顔とも言える玄関で、ゲストを最初に迎えてくれるベルマンのポケットには、必ず1万円を小銭にしたものが入っている。タクシーで来館した客の手元に小銭が不足していた場合のための準備であることは有名だが、それ以上にホテルマンの気遣いも素晴らしい。

私が玄関付近で立ち止まると、声を掛けるより先に「何かご用ですか?」という問い掛けの意図を帯びたアイコンタクトを送ってくる。無反応のまましばらくそこにいると、「大丈夫ですか? ご用はありませんか?」と再びアイコンタクトをしてくる。

馬渕博臣『レクサスオーナーに愛されるホテルで学んだ 究極のおもてなし』(KADOKAWA)
馬渕博臣『レクサスオーナーに愛されるホテルで学んだ 究極のおもてなし』(KADOKAWA)

そこに立ち止まっている限り、間隔を置いて何度もアイコンタクトを投げ掛けてくるのだ。エントランスを訪れる様々なゲストへの気遣いを見ているだけで、実に勉強になる。

大阪のリッツ・カールトンや東京青山のカシータも帝国ホテルと同様だ。オペレーション重視のおもてなしなら銀座のダズルへ行くといい。エンターテインメントなおもてなしを学びたいなら、新宿の四谷三丁目駅近くの焼肉「名門」がおすすめだ。

「名門」には多くの有名人が訪れる。店内にはとんねるずの石橋貴明さんやプロ野球選手のサインがずらりと並ぶ。店長の中村さんのパフォーマンスが面白く、それを求めてやって来るのだ。焼肉をただ焼くだけに終わらせない、客の懐にどんどん入ってくる接客スタイルは、お客様を感動させるとはこういうことかと勉強になった。彼の接客の方法は、テラス蓼科でも参考にした。

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