※本稿は、馬渕博臣『レクサスオーナーに愛されるホテルで学んだ 究極のおもてなし』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
車を作っているはずのトヨタがホテル運営
「トヨタ」と聞いて、最初に思い浮かぶものは何だろうか。おそらくほとんどの人が、「クルマ」と答えるのではないか。
2021年、トヨタグループ全体の世界販売台数は約1050万台を記録し、ドイツのフォルクスワーゲングループを抑えて2年連続で首位となった。トヨタは名実ともに世界的な自動車メーカーであり、今やそのイメージは世界のどこに行っても揺るがない。
そのトヨタが、トヨタグループの会員制保養所(以下、「トヨタのホテル」)を経営しており、一般のゲストにも開放している――。こう話すと、かなり高い確率で「知らなかった」「初耳だ」という反応が返ってくる。確かにそうだろう。自動車メーカーとしてのイメージがあまりにも大きいため、トヨタの知られざる一面は、どうしても意外性をもって受け取られてしまうのだ。
「トヨタの車」と「トヨタのホテル」。
製造業とサービス業である両者は、一見しただけでは対極に位置しているように映る。ところが両者は、見えない部分で脈々と通じ合うものを共有している。いったいそれは何なのか……。
順を追って見ていこう。
共通するのは「顧客へのおもてなしの心」
トヨタ車が世界を席巻している主な理由に、「性能がいい」「信頼性が高い」「快適性が高い」「燃費がいい」などがよく挙げられる。これらの理由を見てわかるのは、徹底した顧客目線であるということだ。作り手は車に乗る人の立場を最優先に考え、その視点をどこまでも追い求めていく。
この姿勢の根底にあるものは、「顧客へのおもてなしの心」と言っていいだろう。だからこそトヨタ車は、文化や宗教、国籍、人種といった壁を乗り越えて、世界中の人々に愛されているのだ。
まったく同じことが「トヨタのホテル」にも当てはまる。ここでは、ゲストの方たちが最良の時間を過ごせるよう、すべてのスタッフが徹底した顧客目線を貫き、「おもてなしの心」を惜しみなく注いでいる。ホテル業でありながら、そこには自動車メーカーで培われたトヨタイズムが発揮されているのだ。
もう答えはわかっていただけたと思う。「トヨタの車」と「トヨタのホテル」の両者が共有しているものとは「顧客へのおもてなしの心」なのだ。