グーグルやアマゾンといった海外のIT企業が勢いを増す一方、なぜ国内からはこうした産業が海外へ飛躍しないのか。資産コンサルタントの方波見寧さんは「日本政府や日本銀行が国内の雇用維持を重視しすぎた結果、国内企業は事業転換が容易にできず、成長の可能性を奪われてしまった」という――。

※本稿は、方波見寧『2030年すべてが加速する未来に備える投資法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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コンピューターの誕生で科学技術の進歩が一気に加速した

「2030年すべてが加速する未来」について、ここで端的に説明するならば、私たち人類は、従来はY=2Xのような直線的なテクノロジーの進歩に慣れていたところ、1960年頃からコンピューターと半導体と集積回路の誕生によってY=2xという指数関数的なテクノロジーの進歩を徐々に迎えることになったということです。

1960年代の大型コンピューター、1990年代のPCとインターネット、2000年代のモバイルは、すべてが2030年への準備道具にすぎません。そして、2021年、COVID‐19を抑え込んだアメリカと中国を中心として「2030年すべてが加速する未来」へ向けて、エクスポネンシャル・テクノロジー産業(指数関数的に飛躍する産業)は一つ一つが加速を開始しました。

科学技術の発展で2030年に起こること

GAFAMとBATでは、PCとモバイルのOS、検索サイトの膨大な閲覧数、数十億人に及ぶSNS登録者、Eコマースと電子マネーによる消費行動、さらに、低空人工衛星によるインターネット・インフラによる情報収集を行ってビッグデータを収集し、AIに学習させています。

※GAFAM:Google、Amazon、Facebook(現Meta)、Apple、Microsoftの頭文字
※BAT:百度バイドゥ阿里巴巴集団アリババ騰訊テンセントの頭文字

その成果として 2030年には、アレクサやシリに話しかけるだけで、IoTを通じてすべての家庭で食事、掃除、介護を数台のロボットが引き受け、料理は3Dプリンターが、買い物はドローンが行ってくれるはずです。電力は太陽光発電による自家発電になり、住居は3Dプリンターが格安で造り上げ、自動車を所有することもなくなります。

アフリカやインド、南米の30億人といわれる貧困層は、数万基の低空人工衛星によりブロードバンドの接続が利用できるようになり、スマートフォンによる銀行機能で送金、決済、貯蓄、住宅ローン、教育ローン、事業ローンが可能となります。

また、スマートフォンだけでアメリカの最先端の授業を無料で受けられるようになります。その結果、2030年には世界中の貧困が解消され、30億人が中流階級へと転身していきます。

「2030年すべてが加速する未来」では、先進国では、いままで手にしたことのない生活必需品が激増するため、あるいは、劣化した道路や橋や鉄道などの社会インフラを大幅に更新するため、経済成長の大躍進が始まります。発展途上国では、貧困層が中流化する過程で過去に経験がないような驚異の経済成長率を記録するようになるのです。