日本がナンバーワンだったのは過去の話
「2030年すべてが加速する未来」では、日本経済も再生しています。ただし、先進国の中でも再生時期は遅れてしまいますし、そこへ行き着く旅では過酷な試練が待ち受けています。その理由は、過去25年間、日本政府と日本銀行がシンギュラリティ(特異点)への加速に抵抗してきたからです。
1960年代のコンピューターと半導体と集積回路は、デジタル化に始まるエクスポネンシャル・テクノロジーの典型ですが、このエクスポネンシャル・テクノロジーの流れを最大限活用したのは日本経済です。
1980年代には、日本のスーパーコンピューターは世界ナンバーワンであり、半導体や集積回路でも世界ナンバーワンでした。その結果、日本の電機産業は世界ナンバーワンで“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と称されました。さらに、株式や土地の評価が上がり、皇居の土地だけでカリフォルニア州に匹敵するほどの価格となり、大学の研究費は膨大な予算を取れました。
ところが1990年、日本銀行総裁は“平成の鬼平”などと称して総量規制を行い土地と株価を大暴落させました。この日本経済の自爆に対して、1995年からはゼロ金利政策と円安誘導政策を始めました。これらはバブル崩壊で倒産危機にあった既存の企業の温存と、主力産業の電機と自動車の製品を円安誘導で安くして輸出を伸ばすというものでした。
ゼロ金利と円安誘導によって日本企業は消滅の危機にある
あれから25年間も、ゼロ金利と円安誘導は継続されています。
バブルを自爆させた結果、日本企業も大学も新しいテクノロジー開発用の研究費を捻出しづらくなりました。ゼロ金利によって古いテクノロジーに基づく既存企業を温存したため、PC、インターネット、モバイルを利用したDX(デジタルトランスフォーメーション)や分散化システムを新規戦略として構築する機会が遅れ、円安誘導によって内需企業を犠牲にすることで、一層、次のテクノロジーへの転換が遅れました。
円安誘導によって輸出企業の電機と自動車を支えてばかりいたために、「2030年すべてが加速する未来」への潜伏期に行っておくべき、潜在的なエクスポネンシャル・テクノロジー産業への転換が大幅に遅れてしまったのです。その結果、日本の大企業の多くは、エクスポネンシャルの“6人の死神”に襲われてしまい、その多くが破壊されるどころか、消滅させられる可能性が高いのです。
エクスポネンシャルの6Dとは、digitization(デジタル化)、deception(潜伏)、disruption(破壊)、demonetization(非収益化)、dematerialization(非物質化)、democratization(大衆化)の6段階のDを示しています。
エクスポネンシャル・テクノロジー企業は6Dを通じて市場に君臨しますが、古いテクノロジーに基づく既存の企業は6Dという6つのDeath(死神)を通じて消滅してしまうという説です。過去25年間に及ぶ日本政府と日本銀行によるゼロ金利と円安誘導は、既得権益を温存し、消滅させられるような企業を大量生産してきてしまったということです。