デメリット以上のメリットが得られることもある

これをいざ始める際には、実は反対意見も多かった。日帰り観光をするとなれば、スタッフの誰かが運転手や案内役を務めなくてはならない。そうなると、ホテルの人員が手薄になってしまう恐れがある。しかも、一度始めてすぐに「やっぱりやめました」という結果になれば、ホテルとしても体裁が悪い。どれも理にかなった意見だったが、私たちは思い切って日帰り観光を導入する決断をした。

「まずはやってみて、無理ならやめればいいだけだから」

最後は、この考え方が優ったのだ。今になって振り返ると、日帰り観光を始めたのは正解だった。2泊以上の利用者を増やすことができ、売り上げアップにつながっていったのだ。

「一度やってみて、ダメならまたすぐに戻す」という試みは、間違いなくチャレンジ精神を要する。しかし、ホテルのサービスを向上させるためには実に有益なスピリットなのだ。

言い方は悪いが、私は日本のサービス業従事者にはプロフェッショナルが少ないと感じている。そのせいで、私たちのようなサービス業で働く人の地位はいつまで経っても高くなっていかない。

プロが少ない理由は、私たちサービス業従事者自身にあると思う。地位を上げていくために、十分な努力を傾けていないのだ。こうした現状を打開するために、私は常に努力を怠らないようにしている。

「どのお茶がおいしいですか?」にも即答する

例えば、テラス蓼科で提供している飲食物に関しては、好き嫌いに関係なく、どんなものでも試食と試飲を行って、それぞれの風味や特徴をしっかりと把握するようにしていた。

飲み物について言うと、私はかなりのこだわりを持っていて、自らの味覚を常に鍛えるようにしている。様々な飲料に精通しておきたいので、コンビニで飲み物を買うときでも、好きか嫌いかを基準にしては選ばない。新しい製品が発売されれば、私はそれを仕事だと思い、必ず購入して飲むようにしている。

ペットボトルの新しいお茶が出れば、全部買って飲んでみる。お茶だけでなく、ジュースでもコーヒーでもすべての種類を最低でも一度は飲んでみる。

ホテルと飲食は切っても切れない関係にある。したがって、飲食についてはプロとして確かな知識を持っておかなければならない。

ゲストに誘われ、ゴルフコンペに参加するときがある。その際、休憩中にお茶を飲むことになったとき、ゲストの方から「どのお茶がおいしいですか?」と聞かれることがよくある。そのときに、飲食のプロとしては何の迷いもなく「運動中の休憩の際には、このお茶がおすすめですよ」とさらりと答えられないといけないのだ。