「消費者の感覚を麻痺させるシステム」

「団信には入りません」といった時も、「どういうことですか⁉」と戸惑いの顔をされて困りました。団信というのは、団体信用生命保険のことで、住宅ローンの返済中に万が一のことがあった場合に、保険金によって残りの住宅ローンが弁済されるという保険制度のことです。

住宅ローンを組む時は加入するのが一般的ですが、僕としては0.2%の金利の上乗せがもったいないと思ったし、絶対に完済できますから、申し込まなかったのです。不安そうな銀行の人に「頑張りますので」と言うのが精一杯でした。

その他にも、融資手数料として110万円も支払うことがわかって、「どうして110万円も手数料が掛かるのですか?」という素朴な疑問が口から飛び出しそうになりましたが、グッとこらえて申し込みを済ませました。

実際に住宅ローンを組んでみて、「意外と何も感じないものだな」ということがよくわかりました。

35年のローンを組むということは、65歳までに完済すればいいわけですから、毎月の収入があるならば、「自分は今、莫大な借金をしている」という切迫感は一切ありません。

長期ローンというのは、「消費者の感覚を麻痺させるシステムなのだ」ということが、実感として理解できました。僕にとっては、これも貴重な体験のひとつです。

将来のために1000万円貯蓄する30代の女性

金銭感覚⑥ 僕には「生命保険」や「貯蓄」の必要がない

団信(団体信用生命保険)や生命保険というのは、将来に不安があるから掛けるのだと思いますが、僕にはそうした不安がないから、生命保険は掛けていないし、掛ける必要もないと思っています。

1万円とか2万円の掛け金を払うのなら、そのお金を投資に回すことで、最終的には保険金以上の金額を手にすることができます。僕が死んだ時には、生命保険を掛け続ける以上の財産が残っているのです。

人に対しての保険はまったく別のものですから、自動車保険はきちんと入っていますが、僕は独身だから、家族のために保険金を担保しておく必要がありません。団信とか生命保険に入る意味というか、理由が見当たらないのです。

貯蓄とか貯金というのも、将来の不安に備えるという意味では保険と同じです。お金を稼ぎ出す能力があって、どこに行っても、どんなビジネスでも生み出せるならば、お金を貯める必要がありませんから、貯蓄や貯金というのは、やっぱり不安の表れなのだと思います。

同い年の30代の女性たちの話を聞くと、1000万円くらい貯金している人がゴロゴロいます。「そのお金をどうするの?」と尋ねても、「とくに予定はない。将来のために貯めておくだけ」だと言います。将来が不安だから、1円も遣わずに、ただ貯金を続けているだけなのです。

彼女たちは、50~60代までに3000万円くらい貯めて、60歳になったらその貯金を取り崩し始めて、すべて遣い切ったら終わり……という将来を思い描いているようです。

1000万円を持っていることが悪いとは思いませんが、遣わないお金というのは意味がないし、そういう生き方をしていると、一生不安が解消されることはないだろうなと思います。

老後の生活を不安に思って貯金を蓄え続けて、いざ老後になったら、今度はいつ貯金がなくなるかという不安を抱え続けるのですから、常に不安と隣り合わせの生涯を歩むことになるのです。