ロシアの失敗と成功から策を練っている

ニクソン政権で国務長官などを務めたヘンリー・A・キッシンジャーは、著書の中でこう述べている。

中国の指導者が、一度きりの全面衝突で決着をつけようとすることは、めったになかった。中国の理想は、相対的優位をさりげなく、間接的に、辛抱強く積み重ねることだ。〔『キッシンジャー回想録 中国』(岩波書店)から抜粋〕

3月10日、アメリカの中央情報局(CIA)長官、ウィリアム・バーンズは、議会上院の公聴会で、「中国の習近平国家主席は動揺している」と指摘した。激しい攻撃と長期化、各国からの制裁は、習近平の想像を超えるものだったのだろう。

しかし、習近平は、あくなき執念を維持したまま、ロシアがクリミア併合で見せた成功とウクライナ侵攻でさらけ出した失敗から学び、じっくりと策を練っている段階……筆者にはそう思えてならない。

ウクライナ侵攻に関しては、プーチンが成功した部分もある。それは、アメリカやEU諸国をウクライナから遠ざけることができている点だ。

プーチンは、EU諸国の首脳との会談で「核」をちらつかせた。これにより、第3次世界大戦や核戦争を避けたいアメリカやNATO加盟国が軍事介入できなくなったばかりか、戦闘機などのウクライナへの武器供与すら迅速にできなくなった。

このことは、台湾周辺の海域にアメリカ軍に出てきてほしくない中国にとっては大いに参考になったはずだ。中国自身が「核」でけん制しなくても、北朝鮮に命じてちらつかせれば、自衛隊とアメリカ軍の艦船の少なくとも一部は日本海に釘づけにできるだろう。

中国軍創建100年の「2027年」がもっとも危ない

では、ウクライナ侵攻の次に世界が驚愕することになる中国による台湾統一の動きはいつ起きるのだろうか。

「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」

これは、2021年3月、アメリカのインド太平洋軍司令官(当時)を務めていたフィリップ・デービッドソンが、アメリカ議会上院で語った言葉である。彼はそれ以降も、筆者ら日本のメディアに対し、「今もその懸念は持っている」と語っている。

前述した元陸上自衛隊統合幕僚長の河野克俊も見方はほぼ同じだ。

「東シナ海や南シナ海における軍事バランスで中国軍がアメリカ軍を上回れば危険性が高まります。中国は台湾を『台湾省』と考え、尖閣諸島もその一部と思っていますから、台湾と尖閣への同時侵攻もあると思います」

河野は、ウクライナにおけるアメリカの関わり方が脆弱ぜいじゃくなままだと、台湾有事の可能性は一段と高まると指摘する。やはりその時期は「数年以内に」である。

筆者も2027年ごろがもっとも危ないと考えている。2027年は中国軍(人民解放軍)創建100年の節目にあたる。その頃までには、3隻目の空母が東シナ海や南シナ海に展開し、台湾上陸に不可欠な強襲揚陸艦の増強も進む。台湾海域に限れば、中国の軍事力がアメリカを上回ると想定されるからだ。