カーネマンの研究によると、収入が上がるほど幸せになりますが、ある一定の額を超えると幸福度は変わらないといいます。その額は年収7万5000ドル。日本円にして約800万円です。
お金がなくても幸せになれるとは言えませんが、お金を稼げば稼ぐほど幸せになれるわけでもありません。これが、フォーカシング・イリュージョン。間違ったところに焦点を当てると間違った判断をすることになるのです。
「お金持ちになれば幸せになれる」といったフォーカシング・イリュージョンをつくるのは、多数派の価値観です。それが、孤独感を募らせる原因にもなります。
SNSが孤独を可視化させた
「みんなと遊べば幸せになれる」。これも、フォーカシング・イリュージョンです。
「結婚すると幸せになれる」
「あの企業で働けると幸せになれる」
「あの学校に入学できると幸せになれる」
「みんなから注目されるようになると幸せになれる」
「友だちが多いと幸せになれる」……
世の中には「○○したら幸せになれる」という価値観のようなものがあります。
もちろん、そうすることで幸せになる人もいます。しかし、すべての人に当てはまるわけではありません。そうしなくても幸せになる方法はいくらでもあって、それを達成できないことに寂しさを感じる必要などまったくないのです。
SNSの発達で「孤独の可視化」が表面化しています。「いいね」の数の多さに、一喜一憂するといった現象は、友人が多いいわゆる「リア充」のほうが優れているかのような価値観に支配されている証拠でしょう。
まさに、フォーカシング・イリュージョンの代表例ではないかと思います。
もしかすると、みなさんの「寂しい」「悲しい」などの感情は、他人と比べることで生まれているものなのかもしれません。そうだとすると、自分の脳がつくり出した錯覚のようなもので、「悪い心のクセ」に過ぎないということです。
孤独感をなくす2つの方法
悪い心のクセは、あくまで感じ方の問題ですから、自分の心がけしだいでなくすことは可能です。
前向きな考え方を身に付ける、簡単な心のレッスンを日々、続けることで孤独感を生み出す考え方を修正していくことができるのです。拙著『幸せな孤独 「幸福学博士」が教える「孤独」を幸せに変える方法』より、その方法の一部を抜粋します。
【ポイント①】「今」から離れる
孤独を不幸だと感じている人の多くが、目の前のことに囚われています。
「今日もまた寂しかった、なぜ私のまわりには誰もいないのか」という想いもあれば、職場や学校などで人間関係がうまくいっていない場合には、「なぜ、あの人は私を仲間外れにするのか」という気持ちを持つこともあるでしょう。
そう思って心が乱れてしまうときは、紙と筆記用具を用意してください。やることはひとつ。今までの自分の歩みを書き出してみる、ということです。