50万ダウンロードを記録したイスラム教の「ゲーム」
また、英国に「アルファコース」という名前で、キリスト教の観点から、人生の意味を考えるプログラムがあるのですが、2020年の春に、プログラムをズームに移行して以来、登録者数が3倍に増えたそうです。
レポートによれば、人々は、伝統的な宗教の持つコミュニティに価値を感じているのだといいます。
たしかに、コロナの影響で、学校や会社にいけなくなり、孤独を感じているのであれば、宗教は、コミュニティとして、孤独を和らげてくれます。
最近のGoogle検索トレンドによると、ブラジル、メキシコ、アメリカでは、イースターの日曜日に行われた宗教関連のライブストリームが、各国の人気ライブストリームのトラフィック数トップ100のうち30%以上を占めていたとのことです。
また、グーグルは、ソーシャル・ディスタンスが始まって以来、これらの国では、宗教行事が日曜日の最大のライブストリーム・イベントのひとつになっているとレポートしています。
私が面白いと思ったのは、イスラム教の「ゲーム」まで登場していることです。2020年の7月に、ドイツのデベロッパーBigitecが2019年にリリースした教育エンタテインメントアプリに「Muslim 3D」(ベータ版)があります。
同社は2020年に、このアプリのアップデートとして、3Dアバターを使ったメッカの「メタバース」をつくりました。このアプリの中で、グランドモスクなどの建物を、アバターで巡回することができるようにしたのです。このアプリは、イスラム教徒を中心に、50万ダウンロードを記録しているそうです。
私が特に面白いと思ったのは、このゲームの空間が、きちんとイスラム教へのリスペクトがあり、とても気品に溢れた世界観になっていることです。
ゲームといえば、「荒野行動」のように殺伐と撃ち合うものが多い中、このゲームは、知的なイントロダクションを充実させ、イスラム教の文化的な荘厳さをうまく表現しているのです。
これが素晴らしいなと思うのは、普段イスラム教にそれほど関わりがない人でも、イスラム教の豊かさや知恵を知ることができる点なんですね。リモートだから巡礼できない人に機会を与えつつ、オープンに学べる場にもなっています。
インスタ映えする聖書をつくるスタートアップも
若い人向けのコミュニケーションの分野で、私が注目しているのは、キリスト教系スタートアップのalabasterという会社です。この新興企業は、聖書のエディトリアルデザインを、とても新鮮な目線でつくりかえています。
同社は、「instagrammable bible(インスタ映えする聖書)」をつくるんだと宣言していますが、若い人たちに「ハッ」と気づきを与えるような活動をしています。
まるで『kinfolk』などの美しいカルチャー雑誌のような、気品ある写真や、シンプルで格調高いフォントで構成された聖書のレイアウトは、同じ聖書の物語でも、新たな発見を与えてくれそうです。
ここまでメンタルケアの側面から、サイエンスやスピリチュアルの世界で起こっているさまざまな現象や事例を見てきました。
まさにセルフケアや孤独を癒すために、食生活のレベルから、宗教やスピリチュアリティまで、全般的に「癒し」が求められているように思います。