病気ではないが、メンタルヘルスに深刻な影響を及ぼす症状が、世界中で増えている。「バーンアウト(燃え尽き症候群)」と呼ばれるもので、WHOも2019年にその存在を認めている。ブランドリサーチャーの廣田周作氏は「医療に隣接する領域から、バーンアウトへの対処法がたくさん生まれてきている」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、廣田周作『世界のマーケターは、いま何を考えているのか?』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

疲れ切ったマネジャーが組んだ両手を首の後ろに回して机に伏している
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多くの人に当てはまる「バーンアウト」3つの症状

今話題となっているのは、メンタルヘルスの中でも、「グレーゾーン」にいる人です。

グレーゾーンとは、すなわち「医師にかかるレベルの不調ではない」けれど「前向きで元気な状態でもない」という意味です。

極度に落ち込みが激しいのなら、すぐにでも心療内科に行った方がいいのですが、「正直、そこまででもない」人って、結構いると思うんです。

「今日、どうしても会社にいきたくない」とか、「日曜の夜になると、憂鬱でつらい」とか、「この資料、つくる意味あるのかな」とか。病気かと言われると、多分そうでもないけど、でも結構つらい時ってありますよね。

これが「グレーゾーン」です。今、世界的に、この「グレーな状態」をなんとかしようという動きが出てきているのです。

キーワードとなるのは、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」です。バーンアウトは、明確なうつ病と違って、医師からすると、病気という診断になるものではありません。

けれど、「仕事に対して手ごたえを感じられない」、「自分の仕事が何に役立っているのかわからない」など、本人にとってはつらい状況を指します。

もしかすると、日本のビジネスパーソンのほとんどが、バーンアウトしているような気がしますが……。

廣田周作『世界のマーケターは、いま何を考えているのか?』(クロスメディア・パブリッシング)
廣田周作『世界のマーケターは、いま何を考えているのか?』(クロスメディア・パブリッシング)

実は、これグローバルレベルで、ホットトピックになっているんです。

2019年、WHOは、正式に「バーンアウト症候群」があるということを明記したんですね。病気ではないが、そういう症状があるということを認めたのです。

WHOによれば、「燃え尽き症候群は、病気や健康状態には分類されていません」と明記しつつも、次のような定義を与えています。

「燃え尽き症候群は、うまく管理されていない慢性的な職場のストレスに起因する症候群である。燃え尽き症候群は3つの側面で特徴づけられる。

① エネルギーの枯渇や疲労感
② 仕事に対する精神的距離の増大、または仕事に対する否定的・皮肉的な感情
③ プロフェッショナルとしてのエフィカシー(専門知を生かして価値ある仕事をできている)の低下(著者訳)」

この定義、やっぱり多くの人が当てはまりますよね……。