5期連続で女性誌トップを走る「ハルメク」の人気商品
内閣府の「高齢社会白書」によると、2020年10月1日現在で、総人口に占める65歳以上の割合は28.8パーセントと、“超高齢化社会”に突入している日本だが、そう悲観することばかりではない。いま、高齢者を対象にしたビジネスが活況を呈しているのだ。
みずほコーポレート銀行の試算では、2025年に高齢者向け市場は101兆3000億円の規模に拡大すると見られている。企業のマーケティングでは、今後の消費の牽引役として「Z世代」が重視されているが、依然として消費意欲の旺盛なシニア世代を無視できないのが現状である。
彼らはいま、どんなものを欲しがっているのか。本稿では、特にシニア女性にターゲットを絞って出版や通信販売事業を展開する企業、ハルメク(東京都新宿区)を糸口に探りたい。
同社の看板雑誌『ハルメク』は月刊平均販売部数が38万部と、5期連続で女性誌のトップを走る(日本ABC協会調べ)。最近はテレビ番組に取り上げられるなど雑誌事業ばかりが注目を集めているものの、実際には同社の売り上げの8割は通販事業が占めている。
13年から8年連続で年間売り上げトップ
数ある商品の中で、消費意欲の旺盛なシニア女性に極めて根強い人気を誇る商品は意外なものだった。高級品でも、安価なものでもない。
1缶284円(税込)の「ハルメク 人参ジュース」なのだ。
2005年1月の発売直後から勢い良く売れ続け、21年4月までに累計4260万杯(コップ1杯190グラム換算)を販売した。同社の通販商品においても、13年から8年連続で年間売り上げランキングトップに君臨する。
この要因は、繰り返し購入する顧客が多いことだ。リピート率は8割という驚異的な数字を叩き出している。「他の商品と比べてもダントツに高い」と、通販本部 健康食品課長の小川伸一氏は胸を張る。
一見、地味な人参ジュースがなぜここまで売れ続けているのだろうか。その秘密に迫る。