商品のクレームや不具合に対応することで、例えば、シニア向けのアパレル商品なら、デザインと同じくらい機能性が重要だという理解が、社員の中に蓄積されていくというわけだ。
顧客理解は一朝一夕にできるものではない。こうした日々の取り組みの繰り返しと積み重ねが、ハルメクの強さの源泉となっている。
「顔が見える商売」が強み…ハルメクの次の一手は
人参ジュースの今後の展望についてはどうか。目下、販売は好調だが、会社全体の利益で言えば数パーセントほどにすぎない。通販会員向け商品である以上、爆発的な広がりは難しい。そこで通販以外の流通も検討している。
ただし、手当たり次第に売ればいいという話ではない。ハルメクは顧客との直接的なつながりを大事にするため、それを理解した売り方をしてくれるパートナーとしか手は結ばないという。
「人参ジュースを求めている潜在顧客は他にもっといるはずです。その扉を開けていかないといけません。ただ、単に売りたいという店に卸すつもりはないです。私たちの思いに共感し、お客さまの声に対して、何かあった時には一緒に解決できるパートナーだけを選びます」(小川氏)
高飛車に見えるかもしれないが、顧客が最優先という絶対的な信念があるから、こう断言できるのだ。
「お客さまの顔が見える商売が当社の競争力です。一般的な量販店だと、人参ジュースを買ってくれた方が、なぜ買ったのか、商品のどこに満足したのか、不満に思っているのかがわかりません。それは避けたいです」と宮澤氏も強調する。
女性誌『ハルメク』は驚異的な続伸を続け、シニア女性の声を軸としたシニアビジネスで成長を続ける一方、売れている商品はリニューアル前から変わらない「人参ジュース」だった。裏を返せば、人参ジュースを超えるロングセラーがないことは最大の課題と言える。
過去には別の健康食品ジュースなどを販売したが、あまりうまくいかなった。人参ジュースを超える新しいヒット商品を目指して、同社の挑戦は続く。