思い込みで商品をつくらない

ハルメクの商品には共通点がある。それは、顧客起点で生まれていることだ。

現在、通販の売上全体の約7割をプライベートブランド商品が占めるが、担当者の勝手な思い込みや想像で商品を開発するのではなく、ほとんどが消費者の声を元にしている。消費者の直接的な要望もあれば、事前に綿密なリサーチをして、これなら売れるだろうと確証を持ったものだけを商品にするのが、同社の基本姿勢である。

人参ジュースも、消費者の反響の大きさから商品化、販売にこぎつけた。

以前、雑誌『いきいき』(現ハルメク)において、がん闘病者が健康管理のために人参ジュースを飲んでいたという記事を掲載したところ、読者から「私も自宅でつくってみたい」という問い合わせが殺到。そこで、編集部が誌面でレシピを紹介すると、今度は「つくるのが大変」「安心できる材料が手に入らない」といった意見がたくさん届いた。

こんなにも求めている人がいるのであれば、自分たちで商品を販売しようとなり、既に人参ジュースを出していたメーカーに製造を委託した。05年に発売すると同時に、「待ってました!」と言わんばかりに商品は飛ぶように売れた。

「最初は小瓶だけを販売していましたが、すぐに在庫切れとなり、1リットルの瓶を出しました。それもすぐに売れてしまうので、3本セット、さらには6本セットと種類を増やしていきました」と小川氏は説明する。現在は瓶6本セット(税込7070円)と缶15本セット(4260円)を販売している。

通販本部健康食品課長の小川伸一さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
通販本部健康食品課長の小川伸一さん

スーパーや薬局で買える商品は作らない

シニア世代が心から望むものだけを販売するのが、同社のポリシーだ。

「町のスーパーや薬局に置いてあるような商品を売るのは、われわれの仕事ではありません。お客さまがハルメクの雑誌や通販カタログを開いて、『これこそが私の探していた商品だ、ここにあったんだ』というものを常につくりたいと考えています」(小川氏)

シニア世代の期待に応えるというのは、単に欲しがっている商品をつくればいいという話ではない。人参ジュースが長く愛されるのは、栄養とおいしさも関係する。

ニンジンの主な栄養はベータカロテンやビタミンAで、体の不調を遠ざけ健康を維持するはたらきが期待されている。その栄養を最大限に引き出せるよう、主原料のニンジンは合成農薬を使わない有機栽培のみ。提携する農家は千葉をはじめ全国10カ所にあり、畑の土づくりから取り組んでいる。

人参ジュースは土づくりから始まる
撮影=中西裕人
「人参ジュース」に使用するニンジンの生産者たち