不登校やひきこもりになった子供に、親はどう接したらいいのか。高校2年生で不登校になり、30代までひきこもりを経験した林恭子さんは「ネガティブな言葉は、傷口に塩を塗り込むようなもの。同世代と比べたり、プレッシャーを与えたりするのは逆効果だ」という――。
※本稿は、林恭子『ひきこもりの真実 就労より自立より大切なこと』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。
家族が「心地の良い環境を整えてあげる」ことが必要
ひきこもり状態というのは、「ガソリンの入っていない車のようなもの」だとも思う。
ガソリンの入っていない車を動かそうと外から働きかけてもそれは無理というものだ。車にガソリンが必要であるように、人もまずはエネルギーを貯める必要がある。
そのエネルギーとは図表1にあるように、何かしら当事者にとってポジティブな出来事や声かけであり、「安心感」や「理解」「共感」などである。ただし、これは一滴ずつしか溜まらずとても時間がかかる。
ところが、図表2のように当事者にとってネガティブな出来事や声掛けがあるとせっかく溜まったエネルギーは一気にゼロになる。また一からやり直しである。
私はこれを何度も繰り返しながら、なんとかいっぱいに溜まってあふれ出すようになったのが「生きてみよう」と思った三六歳のときだったと思う。
家族にお願いしたいのは、一滴一滴溜めるための手助けをしてほしいということだ。そのためには、本人ができるだけ居心地よく、できることなら「楽しい」とか「うれしい」というポジティブな感情を持てるような、心地の良い環境を整えてあげることが必要だ。