投資で成功するには、どうすればいいのか。10兆円の資産を築いた投資家ウォーレン・バフェット氏は「短期間に急いで金持ちになろうとしてはいけない。それよりも金持ちであり続けることのほうが重要だ」という。そんなバフェット氏の卓越した投資哲学とは――。

※本稿は、桑原晃弥『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

ケーブルテレビ局HBOが制作した、自身のドキュメンタリー映画のプレミア上映会に参加したバフェット(2017年1月19日)
写真=Charles Sykes/Invision/AP/アフロ
ケーブルテレビ局HBOが制作した、自身のドキュメンタリー映画のプレミア上映会に参加したバフェット(2017年1月19日)

急いで金持ちになろうとするなかれ

投資を行う以上、リスクと無縁ではいられません。しかし、そんな世界で既に80年近くも投資を行いながら、バフェットは毎年、着実に成果を上げています。

バフェットの投資原則は「損をしない」ことであり、「この原則を決して忘れない」ことです。そのうえで、短期間で急いで金持ちになろうとするのではなく、「ゲット・リッチ、ステイ・リッチ(豊かになり、その後も長期間豊かであり続けること)」(『ウォーレン・バフェット 華麗なる流儀』)を信条としています。

ソロモン・ブラザーズ時代、その後問題を引き起こすチーム「アーブ・ボーイズ(裁定取引組)」をつくり、やがて暫定会長となったバフェットによって引導を渡されたジョン・メリウェザーが1994年、ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)を立ち上げました。資本の25倍のレバレッジを使って取引を重ねることで利益を生み、損失は最大でも資産の20%というのがメリウェザーの計画でした。

説明を受けたバフェットとチャーリー・マンガーは「頭のいい連中だ」と感じましたが、複雑すぎることと、レバレッジに疑いを抱き、参加を躊躇ちゅうちょしました。しかし、ソロモンで素晴らしい実績を上げていたメリウェザーを信頼して12億5000万ドルもの資産が集まり、史上最大のヘッジファンドが誕生しました。

3年で投資家の金は4倍に増え、すべては順調に見えましたが、98年にロシアが対外債務の支払い停止を宣言したことで世界中の金融市場がガタガタになり、LTCMもほんの数日で資本の半分を失ってしまいました。