企業の「価格」より「価値」に注目せよ

バフェットはこう述べています。「価値が8300万ドルの事業を8000万ドルで買おうとしてはいけません。大きな余裕をみることが肝要なのです。3万ポンドの負荷に耐えると業者が主張する橋が建造されたとしても、その橋を走行するであろうトラックはせいぜい1万ポンドです。これと同じ原則が投資にも当てはまるのです」(ベンジャミン・グレアムの著書『賢明なる投資家』に補遺として収録された、「グレアム・ドッド村のスーパー投資家たち」より)

投資の世界で多くの人が気にするのは株価、つまり「価格」の変動です。一方で、個々の企業の持つ「価値」について正確につかもうとする人はあまりいません。

「バリュー投資はいまだかつて流行を見せたことがない」(上記補遺より)はバフェットの説ですが、バフェット自身は「価格」ではなく「価値」に注目することで莫大な富を手にすることができたのです。

バフェットにもあった失敗体験

投資におけるリスクを抑えるためには「価格と価値の差」を冷静に見極めることが重要であり、「十分な安全域」を確保しなさいというのがバフェットの考え方です。では、企業の価値よりも価格が低ければそれでいいのかというと、もちろんそうではありません。

バフェットは「世界一の投資家」という評価を得ていますが、先述したように常に成功し続けたわけではありません。中でもバークシャー・ハザウェイの経営権の取得は、バフェットの失敗の歴史の中でも上位に来る失敗といえます。

1960年代初めのバフェットは、まだグレアムの「シケモク買い」「バーゲン株買い」主義に強くとらわれており、そこで出会った繊維会社バークシャー・ハザウェイを見て、利益が出ない倒産しそうな会社ではあるものの、企業価値よりも株価がはるかに安いため、「安いし、心底欲しい」と思ったといいます。