「完璧じゃなくてもいいんだよ」
実家の両親は、「大変だね。でも、長男に嫁いだのだから仕方ないね。手伝えるところがあれば、手伝うから言ってね」と言ってくれている。
義母の家の近所に住む佐賀さんは、義母に食べ物を持ってきてくれたり、義母が不穏の時に話し相手になってくれたり、一緒に買い物に連れていってくれたりと、いろいろと助けてくれる。
かつて、介護施設で認知症の入所者のケアをしていた近藤さんは、「認知症の介護には慣れている」と思っていたという。だが、仕事と家族では全然違い、イライラしてしまうことや、うまくできないことで落ち込むことも少なくなかった。
しかし、近藤さんが介護をしていると知ったカウンセラーの友人が、「仕事はお給料をもらえるから我慢できる。家族の介護も子育ても、初めてなんだからうまくできなくて当たり前だよ」と言ってくれたため、気持ちが楽になった。
また、義母の主治医に食事の事を相談したところ、「お菓子でも何でも、義母の好きなものを食べさせればそれでいいですよ」と言われ、「完璧じゃなくてもいいんだ」と考え方を変えることができた。
「介護を始めたばかりの頃は、義母の体重減少を止めたくて、3食栄養のあるものを準備し、何とか食べてもらおうとしていました。でも、せっかく作っても『好みじゃない』と捨てられたり、『お腹いっぱいだから』と食べてくれなかったり……。捨てられると精神的にもつらいし、作った時間も無駄になってしまいます。なので今は、『1日1回はちゃんとした食事を食べ、残りの2食は、何でもいいので食べてもらえればそれでいい』と思えるようになりました」
せっかく作った料理を捨てられるのも相当つらいと思うが、近藤さんが義母の介護を始めてからこれまでで最もつらかったのは、息子が「寂しい」と泣いたときだという。
介護が始まる前は、毎日のように息子と公園に行ったり家で一緒に遊んだりしていた。しかし介護が始まると、公園に行く機会も、家で一緒に遊ぶ時間も減った。そのため、息子を連れて義母の家に行こうとし、「ばぁばんちいかない! ばぁば嫌い!」と泣かれたとき、胸が張り裂ける思いがしたと話す。
2020年12月に介護サービスを使えるようになってから近藤さんは、息子との時間をこれまで以上に大切にし、息子に全力で向き合うように努めている。