義妹との意見の食い違い

一方、遠方に暮らす義妹は、仕事の都合で帰省は年に1回程度。だが幸い、介護してくれている近藤さんを労ったり、感謝を伝えたりはしてくれている。ただ時々、意見の食い違いのようなものは生じ、近藤さんを悩ませていた。

以前、義母がガスコンロを使うのが難しくなったとき、義妹は「母はまだ料理に対するやる気はあるので、IHに替えれば、ただスイッチを押すだけの簡単操作だから、安心して料理させられる。だから一緒に練習してあげてほしい」という。

ガスコンロで鍋を火にかける
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
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しかし近藤さんは、「最近の義母は部屋の電気やテレビのスイッチなど、昔から使い慣れたものの操作もできなくなってきている。そんな義母に、新しいことを覚えさせるのは難しいし、ストレスになるのではないか。そもそも料理自体、そばに私がついて、一つひとつ声をかけないと作れなくなってきているのに……」と思った。

話し合いは平行線をたどり、挙げ句、義妹は卓上IHコンロを購入し郵送。「一緒に練習してあげて」と連絡が来た。

近藤さんは、「結局一緒に練習をするのは私で、負担を抱えるのも私なんだよなぁ……」と、複雑な心境。

「義妹とは仲が良いほうだと思うので、関係が崩れるのも嫌ですし、義妹が義母のことを思っているのもわかっているのであまり言えませんし、しかし義母は新しいことを覚えるのを嫌がりますし……」

義妹は、義母が認知症になる前も、「私は帰省できないから、あなたたちが帰省したときに、母にLINEの使い方を教えてあげて」と言ってきた。案の定、夫は面倒くさがったため、近藤さんが教える羽目になる。近藤さんが一生懸命教えたところ、義母は近所に住む佐賀さんに、「こんなの本当はやりたくないんだけど。嫁がLINEを覚えろっていうから……」と嫌そうに話していたという。

現在も、なんとか一人暮らしをしている義母だが、今後それが難しくなれば、その時は「施設も検討する」と、近藤さん夫婦は考えている。

「今、介護にやりがいや喜びを感じているかというと……正直、ありません。きっと嫁姑という関係性と認知症のため仕方ないことかもしれませんが、義母は、表面上は私に『ありがとうね』と言ってくれていても、私がいないところでは、『嫁は何もしない』と文句を言っているのを私が知っているからだと思います」

それでも何とかやっていけたのは、助けてくれる存在がいたからだ。