東京ディズニーリゾートの園内は常に清潔でなければいけない。しかし、お客が嘔吐したときなどはどうするのか。約8年間、清掃スタッフを務めた笠原一郎さんは「週1回は発生していた。ときにはジャングルクルーズの船を独り占めして、10分間のタイムリミットのなかで清掃作業をしたこともあった」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

ディズニーランド
写真=iStock.com/FrozenShutter
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イレギュラー対応でもっとも多い「嘔吐処理」

カストーディアルキャスト(清掃スタッフ)泣かせ、それがイレギュラー対応である。なかでも一番多いのは嘔吐おうと処理だ。“夢の国”ではあるものの、嘔吐処理はかなり多い。週に1回程度、発生する(季節や混雑度合いなどにも関係し、日に2回のこともあれば、半月以上ないこともある)。

SVがグループ通話でカストーディアルキャストに発生場所を流してくる。このメッセージがあったら、発生場所の近くにいるキャスト2~3名が駆けつけて対応する決まりになっている。とはいえ、SVは誰がそばにいるかを把握しているわけではない。キャストそれぞれが自分が近いと思ったら自主的に駆けつけるだけだ。

私はというと、PHS(簡易型携帯電話)に嘔吐処理のメッセージが届くと、その場の掃除に集中し、勇敢な有志たちが駆けつけるのを息を潜めて待った。1分ほど待っても、有志が現れないとき、意を決して現場へ向かった。

嘔吐処理は新型コロナ以前から感染対策としてマスクと防菌手袋をし、殺菌剤が目に入るのを防ぐため防御メガネをかけて行なう。暑い日は息苦しいし、汗がメガネに落ちるので難儀する。できる限りゲストの目に触れないよう、また処理範囲がわかるようペーパータオルをかけ、トイブルーム(スイーピングする際に使用するホウキ)を駆使して嘔吐物をダストパン(L字グリップのプラスチック製チリトリ)に入れ込む。作業するそばで気をつけて通行していただくようキャストがゲストコントロールをする。