テレビショッピングの流行がそのままライブコマースに引き継がれた

——しかし、日本でも同様の需要はあるようにも思うのですが、インフルエンサーによるライブコマースは低調ですよね。

【藤井】確かに、日本でもコロナ禍でECは伸びたのですが、ライブコマースは伸びませんでした。

——違いはどこにあったんでしょう?

【藤井】ひとつは社会環境の違いです。ライブコマースといちばん感覚が近いのは、実はテレビショッピングなのですが、日本でこれがすごく流行していたのは1990年代まで。日本で放送されていた往年おうねんのテレビショッピングの購買層は、現在は高齢化していますから、ウェブでの購買活動になかなか踏み切らない。

いっぽう中国では、2010年前後までテレビショッピングの流行がまだ続いていたんです。それゆえに、テレビショッピングのユーザーたちがスムーズにライブコマースに移行した面があります。

2019年、iPhone7の画面上にTikTokとSNSのアイコンが並ぶ
写真=iStock.com/Wachiwit
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ネット文化が一気に普及したからこそ幅広く定着した

——みんな忘れかけていますが、中国はついすこし前まで「発展途上国」です。現在ほどウェブサービスが普及する前、つい10~15年前までは、日本以上にアナログなものが市民権を得ている「古い社会」でした。

【藤井】その通りです。同じく、もうひとつの理由はテクノロジーが浸透した状況の違い。つまり、現在は中国のほうが日本よりも、ネットで動画配信を視聴する習慣が一般にも幅広く定着している。だからライブコマースが普及したという面はあります。

——既存の社会インフラが整備されていない新興国で、先進国が歩んだ技術進展を飛び越えて新しいサービスが一気に広まることを「リープフロッグ(カエル跳び)現象」と呼びます。中国のライブコマースの流行も、市場の啖呵売やテレビショッピングから、いきなり最先端が普及した感があります。

【藤井】友達からの口コミの延長線上みたいな面もあると思います。しかも、現在の中国のインフルエンサーが売る商品は、タオバオなんかの大手ECプラットフォームがちゃんとバックにあって、ダメな商品だった場合の返品・返金の仕組みもしっかりしています。なので安心感もある。