なぜ骨盤底筋の緩み・衰えが若年化しているのか
加齢とともに尿漏れの患者さんが増え、成人女性の約25%、つまり4人に1人は尿漏れの経験者という調査もあります。根本的な原因は、妊娠や出産、加齢、肥満、閉経による女性ホルモンの低下で、これらによって骨盤底筋の筋力低下が進みます。
しかし、なぜ出産を経験していない若い女性にも骨盤底筋の緩み・衰えがみられるのでしょうか。私は、その原因は「痩せすぎ体型」にあるのだと考えています。今、若い女性はこぞって痩せていますが、痩せすぎるものも考え物です。
痩せること、体重を減らすことを重視するあまりに筋肉をつけず、脂肪だけが身体についた状態になっている恐れがあります。俗にいう「痩せデブ」の状態は「骨盤臓器脱」予備軍ともいえます。
これは近年の偏った美意識が原因だと考えています。スリムなテレビアイドルに憧れて「痩せよう」という風潮が若い女性たちに浸透しているのではないでしょうか。周囲も「痩せていてかわいい」と褒めますから深層心理に刷り込まれてしまっているように思えます。
勘違いしないでいただきたいのは、アイドルたちはステージで3時間、4時間飛び跳ねて歌って踊っていますし、そのために日頃から筋力トレーニングをしています。運動量が多く、よく食べていますから、痩せていても筋肉がついています。
にもかかわらず、体型だけを真似るのは誤りです。自身の身体にとっても怖いことです。心当たりのあるやせ型の人は、よく食べて運動して筋肉をつけることを、今すぐ「待ったなし」でお勧めします。
往年の女優、マリリン・モンローは、寝る前にバーベルを上げるなどして筋力トレーニングをしてスタイルを維持していたそうです。外見だけを真似てはいけないのです。
最近の子供たちは外で遊ぶ機会が少なくなっています。こういう生活習慣もじわじわと筋力低下につながっています。私が所属する運動器疼痛学会の関係者では「そのうち30代でロコモティブシンドローム(運動器症候群)になるだろう」と冗談抜きで話し合われています。
「胸が垂れてしまった」と打ち明けた10代女性
話は少し脱線しますが、若年層の筋力低下症状は骨盤底筋だけにとどまりません。これは、「慢性の腰痛」で来院した18歳の女性患者のケースです。
初診の問診時、この女性患者さんが「最近、胸が垂れてしまって悩んでいるんです」と打ち明けてくださいました。胸をふくよかにしたい一心で、一生懸命食べて太ることにしたそうです。当初は願い通りに胸が大きくなって喜んでいましたが、時間が経つにつれて大きくなった胸はハリをなくし、垂れてしまったというのです。