美佳さんはひとり親世帯の出身で、母親はひとりで子どもたちを育てるために、繁華街から離れた場所でスナックのママをしていた。経済状況でいえば貧困家庭の出身といえる。高校受験に失敗、お金のかかる私立にも行けずに就職したため学歴は中卒になる。前述した収入から推測すると、不安定な生活を送るほかない状態だ。

子どもが生まれてから消息不明になったケースも

まりさん(仮名)の場合は、暴力団構成員やいかがわしい商売をしている男性と交際していた。子どもは3人いるが、全員、遺伝上の父親が違う。ひとり目の父親、ふたり目の父親は暴力団構成員だった。組から逃げたと同時にまりさんとも連絡がつかなくなり、消息不明だ。3人目は最近結婚した男性との子どもになる。3人とも水商売で出会った男性だ。

まりさんも美佳さんと同様、常に不安を訴えていた。「父親」の存在は必要だという固定観念に縛られているからだ。まりさん自身は、両親がそろっている家庭で育ち、県内でも比較的土地が高いエリアの一軒家で育った。両親ともに安定した仕事で、沖縄の中では比較的裕福な家庭で育ったと言える。

しかし、高校を中退して水商売に足を踏み入れてから、お客と関係を持つようになってしまった。そこには「相手から嫌われたくない」という思いもあっただろう。まりさんは現在専業主婦で安定した生活を送っているようだが、第1子は実家に預けているため、現状が子どもたちにとって良いと言えるのかは分からない。

リュックを背負った女の子の手を引く女性
写真=iStock.com/Sasiistock
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「父親がいない」自分の出自に負い目を感じる

最後に紹介するのは、めいさん(仮)だ。10代の頃に、2つ年上の彼氏との間に子どもができた。すぐに結婚したけれども、夫の仕事は雨が降ったら休みになってしまう収入が不安定な現場作業員で、家計はやはり苦しかった。3年たった頃に離婚し、子どもは3人。その後出会った男性との間にも子どもができたため再婚した。今は子ども4人と夫婦2人で暮らしている。

アパートは3LDKで、6人が住むには決して広いとは言えない。めいさんもシングルマザーでいることを不安に思い、同じコミュニティにいる男性と再婚した。新しい夫の月収は約19万円で、とてもじゃないが家族6人を養うには厳しい。めいさんの夫は日当制の仕事で「8000円から上がらない」と嘆いている。