「嫌われたくない」という思いで避妊できず…
中学時代の同級生の多くは、10代の頃に出産した子どもの父親(遺伝上の父親であり、実際の結婚相手とは異なる)に逃げられたり、離婚したりしている。違う男性を渡り歩き、子どもが増えていく傾向にある。遺伝上の父親が違う子どもが2人いることは当たり前で、5子全員違うなどのケースも珍しくない。
そのうえ、日雇い労働など雇用が不安定な男性や、違法なやり方でお金を稼いでいる男性と交際したり、再婚したりすることが多く、収入が安定していないことも共通している。この状況だけ書くと、多くの読者は「自己責任」だと感じるかもしれない。
しかし、本当に自己責任なのだろうか? 河野氏は県民の性教育が足りないと指摘するが、避妊は必ずしも女性側だけの問題ではない。とりわけ、10代の交際はパワーバランスが男性のほうが強く、急に避妊しない性行為を要求されたら断れないこともある。嫌われたくない、離れたくない、ひとりになりたくない。10代女性の複雑な感情が断れなさを生んでいる。
その過程で男性に逃げられたり、離婚したりすると精神的な不安は大きくなる。経済的に不安定な状況にも大きな悩みを抱える。そして、誰かに頼りたくなるし、依存したくなるし、最終的には男性がいないと自分の存在価値そのものに不安を感じてしまう。こればかりは、同性のコミュニティでは、どうにもならない問題なのだ。
「子どもを産めば彼が戻ってきてくれるかもしれない」
ここからは、同級生3人の事例を紹介したいと思う。仕事はさまざまだ。美佳(仮名)さんは16歳で出産し、昼間のパートと児童扶養手当で、何とか2人の子どもを養っている。時給は最低賃金の820円。週5~6日パート雇用で働いている。稼ぎは月12万円弱で、あとは、母子・父子家庭を対象に支給される児童扶養手当と児童手当が収入源だ。
美佳さんは当時、スナックで働くかたわら子育てをしていた。その後、キャバクラに移ったり、昼間の仕事で生計を立てたりしていたが、子どもと血のつながりのない彼氏から暴力を振るわれるようになった。子どもへのクリスマスプレゼントは、ゲーム機はなくゲームソフトだけだ。
そんな経済状況の中、DV彼氏との間に子どもができる。彼氏は中絶を望んだが、美佳さんの意向で出産した。「子どもを産めば、自分のところに戻ってきてくれるかもしれない」という希望を抱いていたからだ。しかし、彼氏は美佳さんの元を離れ、別の人と結婚して新しい家庭を築いている。