特注のエレベーターに多額の費用がかかる

2回目、もしくは3回目の工事では、エレベーターの交換があるはずだ。30年から45年も経過すると、エレベーターもさすがに交換時期である。

何といってもエレベーターは人の命を預かって運ぶ装置だ。安全性には特に配慮すべきである。タワマンのエレベーターは、すべてが特注である。

数十階を行き来するようなタワマンのエレベーターは、既製品化できないからだ。交換の際にも特注でメーカーに作ってもらうしかない。これにも当然、多額の費用が発生する。

多くのタワマンの管理組合は、これらの費用負担に見合った額の修繕積立金を徴収していない。だから、ほとんどのタワマンが築30年前後にくる2回目の大規模修繕工事の時には、すでに資金不足に陥っているはずだ。

そこを銀行融資などで乗り切っても、築45年前後の3回目の大規模修繕工事が実施できるだろうか。そう考えると、2050年頃には3回目の大規模修繕工事が実施できないタワマンが、東京の街で目立ってくるのではないかと予測する。

考えたくはないが、タワマンが廃墟化すると、東京の街にとってはかなり厄介なお荷物になる。それにしてもタワマンという住形態は、建造物としても区分所有のコミュニティとしても、未完成で未知な部分が多すぎる。我々はタワマンという異形の住形態の、壮大な耐久実験をしているようなものなのだ。

2050年には大量のタワマンが廃墟化する

そして、どうやらこれは厄介なことになりそうだ、という未来も見えてきた。最悪の場合、タワマンは廃墟となる。少なくとも現行法規では救いようがない。

そうなれば、もちろん資産価値もなくなる。廃墟化の危機を迎えたタワマンが立ち並ぶ2050年の東京。今からでも何か対策は立てられないものかと考えるが、良い考えは出てこない。

榊淳司『ようこそ、2050年の東京へ 生き残る不動産 廃墟になる不動産』(イースト新書)
榊淳司『ようこそ、2050年の東京へ 生き残る不動産 廃墟になる不動産』(イースト新書)

できることがあるとすれば、これ以上はタワマンを作らないことだ。また、現に所有しているのなら早めに手放したほうがよい。

そもそもタワマンとは、限られた敷地に多くの住戸を作るために作られた必要悪のような存在である。であるにもかかわらず、所かまわずに建てられたのは、デベロッパー側に「もうかる」という強烈な理由があったからだ。

だから、敷地が余っている湾岸の埋立地にまで建ててしまった。考えてみれば相当に無責任なことである。2050年にそういったタワマンが廃墟化の危機を迎えているのであれば、それは製造者責任として開発分譲したデベロッパーに、それなりの負担を課すべきではないのか。

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