宅配寿司としては後発、力を入れたのは「紙のメニューチラシ」
宅配寿司「銀のさら」は2000年にスタートして以来、自社配送・自社製造にこだわり、注文受付から調理、宅配までを一貫して担ってきた。
当時は今ほどフードデリバリーが普及しておらず、「宅配寿司チェーンがデリバリー市場を先に行く存在だった」と、ライドオンエクスプレス デジタルマーケティング部でエグゼクティブマネージャーを務める渋谷和弘さんは振り返る。
「銀のさらは、新規参入としては後発組でした。ただ当時の宅配寿司は、紙のメニューチラシに載っている寿司の写真と、注文して届いた実物の寿司との見た目のギャップが激しいことが多く、割高感の否めない風潮があったのです。そこで銀のさらは、写真のものと同じクオリティを出せるよう、メニューチラシのデザインから寿司のネタ、シャリに一層のこだわりを持って『後悔させない宅配寿司』を目指してきました。こうして、お店で寿司を食べたときと変わらない満足感を提供するために、地道に取り組んできた結果として、業界シェアNo.1になれたと考えています」
競合がひしめくなか、銀のさらの生命線になってきたとも言えるのが紙のメニューチラシだ。
根底には「商品と販促はつながっている」という考えがあるという。
「紙のメニューチラシは、お客様の手元に直接届けることのできる最良の販促です。だからこそ、高級感が伝わるよう、写真映えを意識したり、紙の材質や印刷にこだわったりしていて、当時から現在までずっとこだわりをもってメニューチラシを作成しています。また、制作会社や代理店に全行程を頼むのではなく、メニューチラシ専用の制作チームを自社で抱え、半内製化した体制をとってきました。
ここまでメニューチラシにこだわるのは、銀のさらの平均単価が約5000円という価格ゆえ、薄手の紙では魅力が伝わらず、見劣りしてしまうからです。そのため、メニューチラシを手にしたときの上質な手触り感や、興味をかき立てるような写真のビジュアルなどは、今も昔も変わらずに質の担保を心がけてきたのです」
「正面の感覚で食べたい」ニーズに応えた“放射盛り”
「たかがチラシ、されどチラシ」と言えるように、銀のさらはメニューチラシに並ならぬ執着を持って創意工夫を行っているのだ。
寿司の盛り付け方ひとつとっても、商品開発チームが並べ方や見せ方を考えているという。
「寿司を同じ向きに並べる『流し盛り』のほか、グループで食べる際に『どこからでも正面の感覚で食べたい』という要望に応えたのが『放射盛り』です。色鮮やかな寿司が放射状に広がるきれいな見栄えは、他社に真似されるほど好評を博す盛り付けになっています。そして、桶を見た時の美しさを重視するために、赤と白のコントラストを意識し、全体のバランスを考えながら寿司のネタを並べるなど、随所に工夫を凝らしています」(渋谷さん)