年金法の改正で定年後の就労を後押し
この改正で、多くの人が「年金額が減らないように、収入が一定の額に収まるように調整しながら働く」という働き方をしなくて済むようになります。
60〜64歳の在職老齢年金制度について、厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げが完了する2025年度(女性は2030年度)以降は、対象者はいなくなる予定です。
なお、65歳以上の在職老齢年金制度について、現行の基準は47万円で、この点についての変更はありません。
在職老齢年金制度は、厚生年金に加入しながら働き、厚生年金を受け取っている人が対象となるものです。会社員や公務員は対象になりますが、自営業やフリーランスになれば、いくら収入があっても年金はカットされません。
また、今回の年金の制度改正では、「在職定時改定」という制度が新設されます。これは、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定し、それまでに納めた保険料を年金額に反映する制度です。
これまでは、退職するまで老齢厚生年金の額は改定されなかったため、この制度の導入で、就労を継続しながら年金が増える実感を得ることができるようになります。
継続雇用で働く人の退職は64歳11カ月がベスト
勤務先の継続雇用で働くことを選んだ人は、定年後65歳まで働いて退職し、その後、年金生活に入るパターンが多いのではないでしょうか。その場合、退職するなら65歳になってからではなく、64歳11カ月で辞めたほうがおトクです。
65歳までに会社を辞めた場合、雇用保険より次の仕事に就くまで90〜150日分の失業給付が受け取れますが、65歳以降に退職した場合は、「高年齢求職者給付金」で、30日もしくは50日の手当てを一時金でもらうことになります。
両者を比べると、受け取れる金額に大きな違いがあるので、65歳になる前に退職して失業給付をもらったほうが断然有利です。
また、65歳になる前に会社を辞め、失業給付をもらう人は、特別支給の老齢厚生年金(65歳前に支給される厚生年金)との併給はできませんが、65歳以降に失業給付を受給する場合は、老齢厚生年金と両方受け取れます。
時期を選んで退職することで、失業給付と厚生年金の両方を受け取ることができるのです。
ただし、失業給付の受給が可能な期間は退職日の翌日から原則1年です。あまり早い時期に退職してしまうと、受給できる期間が退職日から1年以内に入らず、残りの日数分が受給できなくなってしまいます。
そのためぎりぎりまで働いて、65歳にいちばん近い、64歳と11カ月での退職がベストな選択なのです。