国民年金と厚生年金の受け取り時期をずらす
覚えておいてほしいのは、年金の繰り下げ受給をするとき、国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)を分け、それぞれの受け取り開始の時期を決められるということです。
例えば、老齢基礎年金の部分が月5万円、老齢厚生年金の部分が10万円だとすると、老齢基礎年金を65歳から受け取り、老齢厚生年金の10万円を75歳まで繰り下げすれば、老齢厚生年金が184%になるため、75歳からは老齢基礎年金5万円+増えた老齢厚生年金18万4000円で、23万4000円が生涯受け取れます。
ただし、加給年金の受給がある人はこの逆で、老齢厚生年金を65歳から、老齢基礎年金を75歳からにするとよいでしょう。なぜなら、老齢厚生年金と加給年金は、セットになっているからです。
年下の妻がいて加給年金をもらえる人は、厚生年金は65歳からもらって加給年金をもらいそびれないようにし、国民年金は75歳からもらうテクニックがあります。この場合は、老齢基礎年金が184%になって9万2000円+老齢厚生年金は10万円で、75歳からの受給額は19万2000円です。
また、夫と妻の年金受給開始時期をずらして受け取るというテクニックもあります。繰り下げを選んだあとに受け取る際には、「繰り下げによる増額請求」のほかに、「増額のない年金をさかのぼって受給」を選ぶこともできます。
繰り下げ請求をせず、66歳以後に65歳にさかのぼって、本来支給される額の年金を一括で請求するのです。これはまとまったお金が必要な場合の選択肢になります。
このように年金を増やすにはさまざまなテクニックがあります。年金は65歳からもらい始めるのではなく、働き方や家計の状況に合わせ、受け取り方の工夫をしたほうがよいでしょう。
年金をもらいながら働くのが理想
原則として60歳で年金保険料の払い込みは終了しますが、その後も継続雇用で働くことを選んだり、ほかの会社に転職をする人は、厚生年金に加入し続けます。
そこで、「在職老齢年金制度」を知っておく必要があります。
「在職老齢年金制度」とは、企業に雇われ、給料と年金の合計額が一定以上になる60歳以上の老齢厚生年金受給者を対象として、全部または一部の年金支給を停止する仕組みです。
こちらも今回の年金制度改正法で見直されました。
60〜64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、2022年4月から、年金の支給が停止される基準が現行の賃金と年金月額の合計額28万円から47万円に緩和され、賃金と年金月額の合計額が28万〜47万円の人は、年金額の支給停止がなされなくなります。