デジタル技術を活用して適正なテレワークを

テレワークをする社員にとっては、プライバシーを守られながら、自らのペースで働くことができれば、満足いくだろう。うまく成果を出すことができて、それが給料のアップにつながればなおさらだ。

会社にとっても、通勤費を節約できたり、オフィスを縮小して賃料を削減したり(さらにはオフィスを廃止したり、地方に移転したり)することができるし、それにより社員の生産性が上がるのなら一石二鳥だ。

それでも会社には、労働法上の責任は残るし、とくに重要なのは、労働契約法上の安全(健康)配慮義務だ。前述したような過労の防止のための措置を講じるのは、そうした義務の履行の一つだ。

しかし、これからの時代は、もう少し違ったやり方もある。それはデジタル技術を活用して、社員が日常業務のなかで自分の働き過ぎや健康状態のチェックができるようにすることだ。

さまざまな健康テックのツールを活用すれば、個人が働きながらも自己の勤務状況や健康状態をチェックできるようになる。会社に個人情報が知られない形で自己管理ができればプライバシーも確保できる。テレワークのような、個人の自律的な働き方には、社員の自己健康管理を中心に据えて、会社はそれをサポートするというやり方がふさわしい。

テレワークを導入する会社は適切な働き方の整備を

テレワークには、ワーク・ライフ・バランスの実現、高齢者や障がい者の就労可能性の拡大などのメリットが期待できるし、会社側にも、災害時の事業継続、遠隔地の人材の活用、育児や介護を理由とした社員の離職の回避などのメリットが期待できる。

職住一体化は、地域社会にも好影響が及ぶ。テレワークには、こうした種々の社会的価値がある。テレワークにはいくつかの課題はあるものの、それをうまく乗り越えて、この働き方のもつ社会的価値が発揮できることが社会にとっても望ましい。そのためにもまず会社は、デジタル技術を適正に使いながら、テレワークに適した働き方を整備することが必要だし、社員のほうは、そういう会社をきちんと選ぶ目をもつことが大切だ。

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