自分の口のニオイにはなかなか気づきにくい。医師の平松類さんは「高齢になると唾液の分泌が減り、口臭を引き起こす。予防のためには、唾液を増やす食べ物を積極的に取ったり、呼吸の仕方に気を付けたりするといい」という――。

※本稿は、平松類『新版 老人の取扱説明書』(SB新書)の一部を再編集したものです。

口臭をチェックするアジア人男性
写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan
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あなたの口は臭いか、臭くないか

高齢になると口が臭くなります。どんなに優しく接していても、満面の笑顔でいい話をしていても、口が臭いというだけで孫は逃げていってしまうものです。

とはいっても、家族も一応は年上にあたる高齢者の口臭をなかなか指摘しにくい。すると高齢者は、「何となく避けられている気がする」「嫌われている」と思い込んで疎外感を感じてしまうのです。

なぜ高齢者は口臭がするのでしょうか。

「おじいちゃんお口臭い」という入れ歯洗浄剤のCMが有名になったせいもあり、高齢者の口のニオイは入れ歯が原因と思われがちです。でも、入れ歯だけではないのです。口臭は85%が口の問題で起こり、15%が胃などで起きます。年齢を重ねることで口内の殺菌と洗浄の効果がある唾液が減るために、口臭が発生しやすくなります。

口臭というのはたいていがずっと同じ状態でつきまとっているため、自分では気づきにくいのです。他人の家に入ると「独特なニオイがするな」と思うことがありますが、住んでいる人は気づいていないのと一緒です。

ですから「自分は大丈夫」と思いがちですが、60歳を超えると43%に口臭があることがわかっています。

そこでまずは、自分の口臭をチェックしてみましょう。用意するのはコップだけ。まず、コップの中に息を吐いて手でふたをします。次に、新鮮な空気を鼻から吸って、「ハーッ」と息を吐きます。そして、コップに入れた空気を鼻から吸いましょう。さて、ニオイはどうでしょうか?

どんなにきれいでもかわいくても性格がよくても、口が臭いと顔をそむけたくなってしまうことがあります。私は小さなトイプードルを飼っています。非常にかわいく、なでると尻尾を振って喜んでくれます。散歩も楽しそうで家に帰ると喜んでくれます。しかし口臭がひどくなった時がありました。顔をなめようとしてくれて愛情表現をしてくれますが、かなりニオイがきついので顔を遠ざけてしまうぐらいでした。