強面なおじいちゃんが孫を抱くとソファに座りこんで声を出して泣いた

ふたりが抱き終わるとおじいちゃん、おばあちゃんの番です。

実はおじいちゃんは目が見えないため、この抱っこが改めて孫の死を突きつけられる辛い瞬間でした。強面こわもてなおじいちゃんが、孫を抱くとソファに座りこんで声を出して泣くのです。しかし、それを止める人は誰もいません。ここはみんながその悲しみを理解し、共感できる場所なのです。

悲しいのは当たり前だよね。

こんな小さな愛らしい子供を取り上げられたんだもの。

納棺式というお別れの場では、誰もが悲しみを自由に表現していいのです。

大切な人が目の前からいなくなったら普通じゃなくていいのです。

結局、1時間30分の納棺式は抱っこするだけの時間となりました。

棺にお子さんを入れるなんて抵抗があるに違いありません。

用意したのは小さなクマがプリントされたかわいい棺でした。ご両親には、まず、この棺をハナちゃんが眠るベッドにしてもらおうと考えました。棺用の白い敷布団を敷くと、いつも使っていたピンクのウサギをかたどった枕を置き、タオルケットを広げました。ぬいぐるみもおじいちゃん、おばあちゃんの手で、いくつも入れてもらいました。

これで寂しくないね。

最後にお母さんの手に抱っこされたハナちゃんは、棺のベッドに横になりました。

遺族にとって辛い納棺式で、納棺師ができること

身近な人の、納得できる死は、なかなかないものです。

納棺式をすることで全ての方が納得できるわけでも、悲しみがなくなるわけでもありません。ただ、納棺式は亡くなった方を目の前にし、触れ、その方を想い悲しむ時間です。冷たい体に触れることで、もうその人は戻ってこないと改めて突きつけられる時間でもあります。

大森 あきこ『最後に「ありがとう」と言えたなら』(新潮社)
大森 あきこ『最後に「ありがとう」と言えたなら』(新潮社)

現実を認めたくないご遺族にとって、それは辛い時間になるかもしれません。しかし、亡くなった方のお体を前に行う限られたお別れの時間にしか、できないことがたくさんあると感じています。

その時間、私たち納棺師に何ができるのか。

生前のお顔を思い出していただけるように、そばでお別れができるように、亡くなった方へ処置やお化粧、着せ替えをする。そして、ご遺族の思いに耳を傾けて、亡くなった大切な方に「何かしてあげたい」という願いをひとつでも叶えることができたら、というのが全ての納棺師の思いです。

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