白内障手術のキモは、どのような人工の水晶を入れるか

【医師】白内障手術をすると、鳥居さんのように劇的にQOLが上がるので、喜ばれる患者さんは本当に多いんです。だた、眼内レンズ(人工の水晶体)は、一度挿入したら30年間以上は劣化しないとされていますので、基本的には一生に一度の手術になります。

再度の手術を防ぐ意味でも、眼内レンズ選びは生活の中で一番多く見ている距離、一番見たいと望む距離を重視したほうがいいですね。眼内レンズの選択と、どこにピントを合わせるかの度数設定が術後の見え方、ひいてはその後の暮らしぶりを大きく左右することになるので、ここはドクターとよく相談しながら、納得がいく方法を決めてくださいね。

<プチ解説>(監修=篠原医師)
●単焦点レンズ/白内障手術で以前から多く使われるのは「単焦点レンズ」。「遠く(5m以上)」「中くらい(2m程度)」または「近く(30~40㎝)」のどれかにピントを合わせる。遠くに合わせると、近くを見る時には老眼鏡が必要になり、近くに合わせると遠くを見る時にはメガネが必要になることが多い。

●多焦点レンズ/約20年前に登場した「多焦点レンズ」は遠くも手元も見やすく、老眼鏡の必要性が大幅に減る。種類は「回析型眼内レンズ」「屈折型眼内レンズ」「焦点深度拡張型眼内レンズ」などがある。このレンズは複数の焦点をあらかじめ設定するが、どの距離にも自在にピントを合わせられるわけではない。脳がこのレンズの見え方に慣れるまでの期間は個人差もある。患者ニーズに合えばとてもいいものだが、見え方に慣れない場合は、最終手段として眼内レンズの摘出、交換となることも。強い乱視がある人は見え方が悪くなりやすく、追加のレーザー手術で乱視を矯正する必要が出る場合もある。

多焦点眼内レンズは各社いろいろな製品があり日々進化し、それぞれに長所短所が。多焦点レンズの手術を選択する際は、日常生活でどのようなものを見ることが多いかなど、執刀医とよく相談してから決断したほうがよい。

なお、単焦点・多焦点も医療機関によって扱うレンズが異なる。

【鳥居】あと、白内障手術をしようとした時に、一番迷うのは、どこの医療機関にするのがいいんだろう? ということだと思うのですが、お医者さん選びの方法はありますか? 

【医師】手術設備を持っていない私のような開業医も多いですが、必ず、信頼できるドクターを紹介しているはずなので、基本的にはかかりつけの先生の紹介先をまずは検討されたらいいと思います。その上で、ご自分が手術に何を望むかを確認して、どのような眼内レンズを扱っている医療機関か、日帰り手術か入院手術か、医師との相性などを総合的に判断して決断されてはいかがかと思いますね。

眼科の手術を受ける患者
写真=iStock.com/FG Trade
※写真はイメージです

【鳥居】先生は私に「単焦点レンズの『近く』」を勧めてくれましたね。お金がないことを気づかってくださり(笑)。実際、多焦点レンズは費用がかかりますものね。

【医師】鳥居さんの場合、仕事上、(PCモニターなど)近くを見ている生活。なので、そこに焦点を合わせるのがベストだと判断しました。

単焦点レンズの手術費用は公的医療保険適応ですから、手術費用は日帰り手術で片眼1万5000~6万円くらい。幅があるのは医療保険の負担割合の差ですね。もちろん、「高額療養費制度」も使えます。

【鳥居】私の場合、両眼入院手術4泊5日で支払総額は8万円弱でした。幸い、生命保険給付対象で全額カバー。多焦点レンズの手術も昨年より、制度が変わったと聞きました。

【医師】そうです。2020年4月より「先進医療」から保険外併用療養費制度内の「選定療養」という枠組みで行えるようになったんです。

「選定療養」とは、追加費用を負担することで、保険適応の治療と保険適応外の治療を併せて受けることができる制度です。医療保険の給付対象の通常の白内障手術を越える多焦点レンズの料金や追加の検査料が患者さんの追加負担となります。病院の差額ベッド代と考えると分かりやすいかもしれません。今現在はこの選定療養か自由診療かを選べるということになっています。いろいろな選択肢があるということは患者さんにとっては良いことです。

【鳥居】ありがとうございました。

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