3月は入学、就職、転勤などにより転出・転入が増え、賃貸物件市場がにぎわう。だが、物件によっては貸し主が借り主を細かくチェックするケースもあり、希望の部屋を借りられない人もいる。貸す側はどんな基準を設けているのか。業界の事情に精通する老舗不動産会社の代表に聞いた――。
アパートの間取り図
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「貸す側」が圧倒的有利…賃貸物件の審査の中身とは

「まず、都市部で賃貸物件を借りたい方にお伝えしたいのは、今は完全な貸し手市場だということです。分譲物件なら、キャッシュさえあれば契約に問題はなく、売る側と買う側の関係もその場限りのことが多いですが、賃貸の場合、貸す側と借りる側の付き合いは続く。だから、大家さんのお眼鏡にかなった人が優先的に貸してもらえるということですね」

そう語るのは、都内で約2万件の物件を扱っている老舗不動産会社の代表Aさんだ。

マンションやアパートなどの賃貸物件は、入居後も大家(オーナー)や不動産会社、管理会社、保証会社との関係が継続される。そのため、入居前のチェックや審査が何重に行われることがある。

大家の立場からすると、毎月、滞りなく家賃を支払ってくれて、近隣住民や管理会社ともトラブルがなく、常識的に部屋をきれいに使ってもらえる人に入ってもらいたい。それゆえ、「この人に貸しても大丈夫かどうか?」という「審査」が行われるのだ。

Aさんによると、審査は主に「不動産屋審査→保証会社審査→管理会社審査→貸主審査」の4段階がある。物件によっては、最初の不動産屋審査をクリアすれば即入居決定となるものもあるが、以降の審査があることも珍しくない。借りる側はどんなところを注意するといいのか。

1:不動産屋審査

審査は不動産屋に連絡した時から開始されていると思うべし!

「賃貸仲介業である不動産屋は大家さんと借りたい人の双方をサポートし、つなぐのが仕事ですが、不動産屋にはクライアントである大家さんに入居希望者の人物像を報告する義務があるんです。やはり、問題があると思えるような希望者は紹介しにくいということになりますから、複数の方が借りたい物件の場合、やはり清潔な身なりで常識的な言動の方が有利ですね」(Aさん、以下同)

Aさんによれば、例えば、築古の1LDK家賃12万円の物件に対して「10万にならない? 俺、メガバンのMに勤めているんだけど」といった客も少なくないそうだ。仲介手数料や家賃を値切ろうとする人もいるということだが、これは明らかに印象が悪い。

不動産会社は「借りたい人の希望をかなえるべくできる限り借主側の立場に寄り添いたい」という思いも持っているとはいえ、第一印象が悪いと、物件の内覧自体を断られることもある。また、次の保証会社への審査依頼(必要なケースの場合)も、その結果報告も、すべて不動産会社経由。最初に不動産会社に連絡をした段階から、審査は始まっているといっても過言ではないのだ。