完全に倒れてしまってからでは遅い
冒頭で紹介した、私に相談をくれた20代女性の場合であれば、まずは休養と治療が必要であると考えられるため、生活保護受給の申請が認められれば、まずはケースワーカーやソーシャルワーカーの協力のもと、適切な支援や医療につなげてもらうことが可能だ。住居の確保も含め、経済的な問題や不安を取り払い、まずはしっかりと休息をとってもらうこと。これは長期的に見て、本人が再び就職し、自立した生活を送るために必要不可欠なプロセスである。
逆に言えば、心身を壊した状態で働き続け、完全に倒れてしまってからでは必要になる休息期間や治療期間が長くなり、場合によっては数年以上働けない状態に陥ることもある。本来は、全ての人がそうなる前にセーフティーネットにたどりつくべきなのである。
過去に戻れるなら、迷わず生活保護を受給する
私は司法書士事務所に勤務していた前職時代を含めれば、これまで1000人以上の生活困窮者と話をしてきたが、過去の自分を含め、心身に異常をきたしている状態では「長期的な目線でライフプランを考えること」は、本当に困難なことである。
彼ら彼女らは心身の不調で思うように出勤ができなかったり、退職、転職をくりかえしたりする自分に対して強い自己嫌悪を感じていて、「自分は甘えているのかもしれない」と自責の念に駆られている。私自身、心と体が悲鳴を上げているのを無視して生活のために働いていたころ、同じように自分の弱さを責め続けていた。その後、体調が悪化して倒れてまったく働けなくなるまで、自分がどれだけ極限の状況にいたのかがわからなかったことは、本当に恐ろしいことだと思う。
私は現在、個人事業主として執筆活動を行う傍ら、今もうつ病と複雑性PTSDの治療を続けている。虐待があった実家から逃げ出してから8年、会社員を辞めてから5年ほど経つが、今もフラッシュバックや殴られる悪夢を見て、毎晩叫び声をあげたり暴れて起きたりする日々を送っている。
今年30歳になったが、あの頃、私は誰にも「助けて」と言えなかった。もしも過去に戻れるなら、迷わず生活保護を受給しながら治療と休養に専念して、また元気に働けるよう生活基盤を整える道を選んだと思う。
「もう限界だ」と考えているすべての人に、こうした選択肢のことを知ってもらいたいと思い、今、筆を執っている。