生活保護の99.5%以上は適切に支給されている
中には「そこまで落ちぶれていないんです、生活保護だけは何としても避けたいんです」と話す人も少なくない。若者たちがこれほどまでに生活保護受給を敬遠するのには、マスメディアが生活保護受給者への憎悪感情を扇動してきたことが背景にある。
日本の生活保護費全体のうち、不正受給額はわずか0.45%(2015年)にすぎないにもかかわらず、これまでメディアでは、視聴率の取れる不正受給の問題を過剰に取りあげては、社会全体に「生活保護受給者」への嫌悪や偏見を増幅させてきた。
99.5%以上は適切に支給されているという事実はまったく報道されず、ごく少数の不正受給者を糾弾するような内容を、ワイドショーのみならず「報道番組」までもが流してきたことで、本来、生活保護を受給せざるを得ない状況にある人たちが公的支援を敬遠し、経済的困窮から抜け出せずにもがき続けている現状は、国のセーフティネットが機能していないと言わざるを得ない。はっきり言ってこれは、異常事態である。
あろうことか政府までもが「自助、共助」を強要する社会では、若者たちが誰にもSOSを出せないのは当然のことである。
「自立した生活」の基盤を整える手段としての生活保護
よく誤解されているのは、生活保護を受給すると再就職が難しく、現在自分が得ている収入と同レベルもしくは高い収入を得られる職業には就けなくなる、というものである。
一度「社会のレール」から降りてしまうと、二度とまともな仕事に就けないと考える人々があまりにも多く、これが足枷となって「助けてほしい」が言えない社会的な風潮を作り出してしまっている。
結論から言えばこれは間違いであり、生活保護を受給していたことが原因で職業選択の自由を制限されることもなければ、就労できない職種があるわけでもない。もし万が一そのような制度があるならば、それは明確な差別であり、違憲である。
生活保護を受給することは、残りの人生を生活保護費で生活し続けるということではない。むしろ生活保護制度を「一時的に利用する」ことで、自立した生活の基盤を整え、再び社会復帰をする人は非常に多い。
例えば、以前、うつ病と適応障害を発症し、フルタイムで働くことが難しくなり退職を余儀なくされた30代女性から相談を受けたことがある。彼女ははじめ、やはり生活保護の受給に抵抗感を持っていたが、生活費を稼がねばならないという強迫観念から病状がさらに悪化し、さらに金銭的に頼れる家族などの後ろ盾がなかったことから福祉事務所に相談して生活保護受給に至ったようだ。
後日、彼女から「生活保護を受けることになった」という報告と、「生活の心配が一時的になくなったので、これから治療を続けつつ、無理のない範囲で腰を据えて仕事を探せそうだ」と前向きな言葉が届いた。